週休3日制導入も「希望者ゼロ」の理由

では、すでに週休3日制を実現している企業の実例を見ていこう。

東海地方で十数軒の薬局を展開するA社では、5年前に週休3日制を導入。特徴的なのは選択制であることで、社員が従来のまま週休2日で働くか、週休3日にシフトするかを選べる形にした。その結果、何が起こったか? 同社の人事担当者がこう話す。

「求人を出すと、それまではほとんど見受けられなかった県外からの応募者が増えたほか、大都市圏から移住して入社した人も数名います。やはり週休3日制は子育て中の人や、余暇を充実させたいという人には根強いニーズがあると感じました」

だが、このA社では約30名の正社員のなかで、週休3日で働く人はわずか5名にとどまったという。しかも、その5名は週休3日制導入後に入社した人ばかりで、導入前から勤務していた社員は誰ひとり、週休3日の働き方を選択しなかったのだ。一体、なぜ?

「当社の週休3日制は『給与削減型』なんです。つまり、週の休みが2日から3日に増えたことで月の労働時間が2割程度減る分、基本給も2割下がります。このご時世、給与を下げてまで休みを増やそうと考える社員は誰もいなかったんです」

日立製作所やパナソニックも選択型の週休3日制を導入する方針を示しているが、選択制にすると、社内に週休2日の社員と週休3日の社員が混在する形になる。そのときに起こりうる問題について、都内の人事コンサルティング会社の社長がこう語る。

「週休3日の社員が平日に休むと職場の業務に穴が空き、週休2日の社員がフォローするケースが出てきます。これが重なると『なんで俺が週休3日の社員の面倒を見なきゃいけないんだ!』と不満が募り、社内で分断が生まれることに。特に『週休3日はズルい』という日本的な企業風土がいまだに残るような会社だと、なかなかうまくいかないでしょう」