世代間ギャップを生む「敬意逓減の法則」とは?
30代女性の敬語がより丁寧になり、これを受けてさらに20代女性も同じような表現を身に着ける。影響を受けた同年代の男性も似たような言葉遣いをする。かくして、20〜30代の若い世代ほど、より丁寧な敬語表現を使う傾向が強くなっていく。
しかし、「させていただいてもよろしかったでしょうか」というような敬語を使われた年配者は違和感を覚える。世代間ギャップはなぜ生まれるのだろうか。
「同じ敬語表現をずっと使っていると、やがて言う側、言われる側、どちらもその丁寧さに慣れてしまい、敬意が薄くなったように感じてしまうんです。これを『敬意逓減(ていげん)の法則』といいます。その結果、新たにもっと丁寧な敬語が生まれる。『していただけますか』→『していただいてよろしいですか』→『していただいてよろしかったですか』→『していただいてよろしかったでしょうか』と言葉を重ねていく。こうして敬語は時代を経るごとにより長く、丁寧になっていくのです」
若い世代は「失礼があってはならない」「きちんと敬意を表さないと」という思いで二重、三重の敬語表現を使う。しかし、年配者は自らが若いときに覚えた敬語が基準となっているため、「過剰な表現だ」「日本語としておかしい」と感じてしまう。
「敬語に慣れない若者は、まずは間違ってもいいからできるだけ丁寧に話そうと心掛けることです。二重敬語になったり、尊敬語と謙譲語が使い分けられなかったりしても気にしない。『敬意逓減の法則』を考えると、世代間の溝はなかなか埋められません。でも、正しい敬語より大切なことがあります。それは敬意。その思いさえあれば、たとえ間違いを指摘されることはあっても、怒られることはそうそうありません。生まれたての赤ん坊が日本語を覚えるようなもので、いったん社会に出ればまっさらな状態からどんどん習得していくのが敬語というものです」