心地よさの秘密その②、アレンジした「いいとこ取り」
水風呂もしかり。徹底的に考え抜き、全国の名施設で実際に体感して素晴らしいと思ったものを、松本さんなりのアレンジも加えて落とし込んだそう。その結果、男湯には水深150センチ、女湯には135センチの「立ったまま浸かれる」深さの浴槽を設置することに。ステップを下りて一番深いところまでいけば、全身を一気に冷やすことができる…サウナ好きにとっては最高にして究極の水風呂だ。
「サウナ室を出てすぐ、という動線がいいなっていうのがまずあって。そのうえで熊本の『湯らっくす』さんなどにもある、立ったまま入れる水風呂にしたいな、と。全身のどこも曲げずに水中で大の字になると、体の表面全体がどこも隠れず水に包まれて冷やされるので、気持ち良さが全然違うんですよね。
でも、下に足が着いたほうが安心感はあるし安全だな、とか、階段を一回上ってから下りるのはやめて、ただ下りるだけにしたいなとか…いろいろ考えて設計してもらいました。できるだけお客さまのストレスはなくしたいし、銭湯なんで高齢の方もいらっしゃるから、やっぱり安全は大事なんですよね」
「いいとこ取り」だけではない。さまざまな施設で実際のお客さんの動きにまで細かく注目してきた“成果”、そしてこれまでに松本湯で経験したことが、すべて反映されている。
「深い水風呂には16℃前後に冷やした水を使っているんですが、その横にもう少しマイルドな温度・・・28℃前後の水を入れた浴槽を置きたいなと。
これを大阪の『大東洋』さんや浅草の『湯どんぶり栄湯』さんで見た『泡風呂』にしたらめちゃくちゃ気持ちいいだろうなと思って。冷たい水風呂から少しぬるめへ、という、いわゆる“冷冷交代浴”を、泡が体をなぞるあの気持ち良さで味わったら最高なんじゃないかなって」
そして、水風呂を出たあとに休憩するスポットとして、体を横にできて、やさしいそよ風を上方から浴びられるエリアを設置。松本湯と同じく屋外スペースがない施設でも、このギミックを導入しているところは多い。
「『スカイスパYOKOHAMA』さんとかですよね。ご想像にお任せしますが、これもたしかに影響を受けています(笑)。あれ、気持ちいいもんね。あれを畳の小上がりでやったらどうだろうって。ここも完成直前に設計変更して作ったんですよ」
ほかにも、レイアウトや設置するものにも徹底的にこだわりまくる日々。その結果、実際に完成したのはなんとリニューアルオープン当日。開店まで2時間ほどというタイミングだったそう。
「さすがに焦りましたけどね。“あぁ~、出来た! 急いで掃除しないと、お客さん入って来ちゃうよ”って(笑)。でも…そこまでしてでも最高のサウナを作って『銭湯でもここまでやるんだ、銭湯も捨てたもんじゃないな』って思ってもらいたかったんです」