「Negative Pop」に込められた想い
――写真展『置き去りの記憶』では、他のカメラマンの作品も出展されていますね。
丸谷 大江麻貴さんは、花が開いていくのか閉じていくのか、どちらにも取れる写真を撮っています。誕生なのか破滅なのか。そんな独特の世界があります。コバヤシモトユキさんは、2044年が舞台。今が過去で、それを未来から見ているという設定です。
栗山秀作さんは被写体を尊敬していて、撮っても撮っても撮りきれないものを追い続けているように思えます。嵯峨倫寛さんは、東日本大震災の復興の姿。とても切ない記憶です。
舞山秀一さんの写真はとてもカッコいい。光ではなく"影"を撮るカメラマンです。脇秀彦さんは、死にとても興味を持っていますが、死を表現すればするほど生が写ってしまう。生と死を行ったり来たりしています。和田浩さんは、ドキュメント作品がとてもうまい。そして、日常にある狂気を表現するカメラマンだと思います。
今回はいろいろと言葉で説明していますが、本当は写真を見て、皆さんが自分なりにいろいろなことを少しでもいいので感じ取ってもらったほうがいいのかなと思っています。
――ちなみに「Negative Pop」とは、どんな意味なんですか?
丸谷 生きていれば、誰もがネガティブな気持ちになるときがあると思います。それを強引にポジティブに変えるのは大変です。でも、ほんの少しのポップさなら出せるかもしれません。そうすれば、ネガティブな状況でも前を向いて歩けるかもしれません。そんな思いで名づけました。
Negative Popは、プロのカメラマンがスポンサーや媒体などのしばりをなくして、自由に感性のまま撮った作品を無料で見ていただける写真サイトです。
でも、この"しばりがない"というのが非常につらい。OKを出すのは自分なので、『スポンサーがこういったから納得のいく写真が撮れなかった』『撮影時間が1時間しかなかったから妥協した』などと言い訳ができないんです。
でも、そのかわり自分の気持ちは入れることができます。ぜひ、プロのカメラマンが本気で撮った写真がどんなものかを見に来てください。よろしくお願いいたします。
■「Negative Pop」(https://negativepop.net)
丸谷嘉長(Yoshihisa Marutani)/1962年生まれ。神奈川県出身。主な写真集に『広末涼子 Teens 1996-2000』(集英社)、『松本穂香1st PHOTO BOOK negative pop』(集英社)、『藤原竜也 写真集』(文藝春秋)などがある。
「Bar山崎文庫」東京都港区赤坂6-13-6 赤坂キャステール102/写真展『置き去りの記憶』は3月4日(月)から3月30日(土)、月~金は17時~26時、土曜は17時~24時