ドイツで話題にならなかった「3位浮上」
その厳しい議論の矛先は再生可能エネルギーの順調な増産という成果にも向けられる。
ドイツはガス・石油の不足とは裏腹に、電力供給そのものは安定している。再生エネルギーが2023年に国内の電力供給量の50%以上を占めるまでとなり、電力不足は生じていない。
日本では「ドイツはフランスの原発からの電力に頼っている」というニュースをよく見聞きするが、実際にはドイツは再生可能エネルギーが順調に増えたおかげで、電力の輸出量が輸入量を上回る電力輸出国になっている。
ただ、ドイツの現政権は中道左派の緑の党と社会民主党、自由市場重視の自由民主党による3党連立政権となっている。
そのため、2050年までに電力の大部分を再生可能エネルギーで賄うといった意欲的なエネルギー政策を打ちだしたものの、その実現プロセスをめぐって3党間では内紛が絶えず、国民を失望させている。
エネルギーシフトの成功を評価するよりも、まずはそうした未解決の問題を議論する必要があるというのがメディア報道の中心となっているのだ。世界的なインフレや労働力不足もドイツの経済発展にとっては待ったなしの対応すべき課題とされている。
たとえば、ドイツ国内で2月15日に放送された某人気テレビ討論番組のタイトルは『危機に陥るドイツ』というものであり、「人手不足が解消されない」、「移民の増加により、右翼党の支持がさらに伸びている」などの議論が交わされた。
ちなみに、その番組内ではドイツが日本を抜き、GDP3位になったという論点はまったく出てこなかった。要するに、ドイツはGDP3位に「一喜」するのではなく、3位にランクアップしても解決できずにいる経済課題こそ目を背けることなく、議論して改善しなければいけないというスタンスなのである。