新聞、雑誌、書籍…あらゆる“活字”に触れて知識を得る

毎日3紙の新聞を読み、現代の社会情勢にアンテナを立てる一方で、本明氏は『平家物語』に今の世の中を重ね合わせ、自分がどう生きるかを考えているという。

平家物語の中で有名な一節である「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり」がお気に入りで、経済も動的で絶えず変化するものであり、いつの時代も「虚しさ」や「無常感」があることを言い表しているという。

「どれだけお金を稼いでも、いい生活がしたいわけではなく、『死ぬまでにどれだけ自分が満足できるか』ということを意識しながら、日々の生活を送っています。現在、私は55歳ですが、本当に自分の時間がないと思っていて。いつも本は2冊は欠かさず持ち歩き、移動中に読むようにしています」

取材時にカバンの中に入っていた書籍
取材時にカバンの中に入っていた書籍

さらに毎朝、新聞や経済誌に目を通すのを習慣づけているそうだ。日経新聞、朝日新聞、繊研新聞、週刊東洋経済、Foreign Affairs……。加えて、読書のジャンルも多岐にわたっている。社会学、人文学、歴史、小説、現代思想、文学、古典……。

いま好きな作家は岸政彦と柄谷行人。

ありとあらゆる本を読み、知識や教養を身につける。そして、実際に知識人や有識者と会った際に、自分の認識が正しいかの答え合わせをしているのだという。独自の審美眼を磨き、商売の勘どころを抑える。これこそ、“本明流商い”の基本なのだろう。

長年スニーカー業界に身を置き、直近では新著『スニーカー学 atmos創設者が振り返るシーンの栄枯盛衰』を刊行した本明氏だが、「次はハイブランドのスニーカー専門のセレクトショップが流行る」と見立てている。

「需要と供給の観点で考えると、企業価値は物の流通に比例し、どのくらい売れるかで価値が決まる。人と被らないのがファッションの醍醐味だとすると、ハイブランドがスポーツ分野に入ってきてもおかしくない。

ナイキのスニーカーは大量生産する分、ハイブランドよりは安い価格で市場に販売されます。その一方で、定価2万5000円のジョーダンをリセールで5万円で買うくらいなら、初めから生産量の少ない定価10万円ほどのハイブランドのスニーカーを買う選択肢のほうが賢いわけです。

また、最近では『ティファニー × ナイキ』や『アディダス × グッチ』といったコラボが大きな反響を呼び、スポーツとラグジュアリーの親和性が再認識されました。

ハイブランドもタウンユースだけではなく、スポーツとライフスタイルを融合したスニーカーを出せば、売れると理解しているはず。いずれ、どこかのブランドがその市場に乗り出すことは十分あり得るのではと考えています」