田舎暮らしは節約に向いていない

話を戻すとして、前述のように僕の移住の動機は一番に経済的な事情であって、それ以外に、例えば田舎で起業したいとか、そんな明確な目的意識を持って千葉県に移住してきたわけではなかった。妻と知り合った時はたまたま都内に住んでいたというだけのことで、これまでの人生の中では、僕は田舎町で過ごした時間のほうが圧倒的に長い。

都会と田舎、どちらが好きかと聞かれればもちろん田舎とは答えるが、それは憧れがあったというよりは、自分にとっては田舎の方に馴染みがあるからにすぎず、年齢的にも今さら田舎で何か新しいことに挑戦する気にもなれなかった。むしろ、大げさな言い方になるが、僕は入籍を機会に、自分の人生の整理を始めるつもりで千葉県にやってきたのである。

田舎暮らしに関する情報を見ていると、例えば「スローライフ」といったような一面的なイメージの文言を見かけることがある。だが、僕は田舎での暮らしがのんびりできるものだとは思わないし、率直に言って田舎暮らしは節約にも向いていないと思う(できないわけではないが)。

近年、無駄な持ち物を持たない「ミニマリスト」という暮らし方が時折メディアに登場するが、あれこそ田舎暮らしの対極に位置するものという気がする。都会ほどサービスが充実していない田舎では、どうしても自分でこなさなければならない用事が増えるので、そのために必要な道具(例えば草刈りの鎌など)は増えていく一方である。

買い置きをしたり道具をそろえるのであれば、当然その保管スペースも必要になってくる。

娯楽に関しては、もちろん都会のような娯楽施設はないので、そういったところに出向いて余暇を過ごすことはない。せいぜい、たまに妻と成田市や千葉市などの大型商業施設に出かける程度であろうか。

僕自身は昔から都会でなければできないような趣味を持ったことがなく、都会でやることと言えば古本を買って回る程度だったので、あまり自分の嗜好を一般化して語れるものではないとは思うが、特に退屈で不満に感じることはない。

千葉・限界分譲地のリアル「スローライフもミニマルライフも住むメリットも存在しない」そもそも田舎暮らしは節約に向いていない_4
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日々流れる時間は平々凡々

日常生活にせよ娯楽にせよ、こうして普段の自分の生活を改めて文字に起こしてみると、自分で読み直しても、今の限界分譲地での生活は、都会の生活と比較してどこにメリットがあるのかわからなくなってくるが、それでも僕自身にはもう都会に戻る意思はない。

高齢となって自家用車の運転が困難になったとしても、(それが可能であるならば)居住地として選ぶのは、せいぜい人口数万人クラスの小都市ではないだろうか。このあたりの感覚は、たぶん都会志向の方と話しても平行線のままなので、僕は普段、ブログでも動画でも、積極的に移住を勧めることはない。

僕が自分のブログや動画で発信しているのは、その大半がデメリットやリスクを中心に語るコンテンツなので、そもそも僕の発信物を見て移住の欲求が湧く方もまずいないとは思うが、おそらく田舎を居住先として選ぶ人は、僕が改めてどうこう言うまでもなく、また大仰な自己実現の目標を立てることもなく、自分の中ではごく当たり前の選択肢として田舎町を選択するのではないかと考えている。

今の僕は確かに、いわゆる「ユーチューバー」という部類に属する者なのかもしれないが、仕事として取材や動画編集を行うこと以外に、何か特筆できるような風変りな生活を送っているという自覚もない。生きていてつまらないわけではないが、そんな刺激的なイベントが頻繁にあるわけでもなく、日々流れる時間はきわめて平凡なものである。

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吉川祐介
千葉・限界分譲地のリアル「スローライフもミニマルライフも住むメリットも存在しない」そもそも田舎暮らしは節約に向いていない_5
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嘘八百・誇大広告、デタラメ営業、乱開発……高度成長期・バブル期の仰天販売手口を紹介し、「資産価値マイナス物件」が再び分譲されている現状を明らかにする

(目次)
第1章 取り残される限界ニュータウン
第2章 限界ニュータウンはこうして売られた
第3章 原野商法の実相
第4章 変質するリゾートマンション
第5章 限界ニュータウンの住民 
第6章 限界ニュータウンの売買
第7章 限界ニュータウンは二度作られる 
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