中3の春休みに人生初ディスコに行ってから朝帰りの日々

Kダブ 「ラ・スカーラ」はオレが高校に上がる直前の中3の春休みに、オレからすればひとつ上の松濤中のOGに、生まれて初めて連れて行ってもらったディスコです。

叶井 だから、オレからすると松濤中や青山中のやつらは、めちゃめちゃ進んでいたわけです。あの塾に通っている目黒三中の生徒はオレだけだったから、「渋谷の塾に行ったらディスコに初めて連れて行かれた」って、学校の友達に自慢したもん。渋谷の奴らヤバいよって。

末期がんで20キロ痩せた映画P・叶井俊太郎が中学の同級生でラッパー・Kダブシャインと振り返る“チーマー以前”の渋谷_4
Kダブシャインと叶井俊太郎

――塾に行っているのに全然勉強していないですね。

叶井 当時、ほぼ家に帰っていないんだよね。学校の後に渋谷の塾へ行って、終わってから松濤中のやつらとディスコに行き、また制服に着替えて学校行くみたいな生活していたから。今この年齢でこういう病気になったことで、あの頃一緒に遊んでいた奴らどうしてんだろうなって思うというか、すごく印象に残っているわけです。オレだけ学校も違ったし。

Kダブ まあ、でもいろんな人がいたけどね。ちょっとずつそういう人たちと仲良くなっていくみたいな感じだったから。

叶井 そういう小さなコミュニティが渋谷の中に点在していたよね。

Kダブ 80年代前半は映画『サタデーナイトフィーバー』(1977)の名残りみたいな時代だから、まだクラブじゃなくてディスコ全盛で、渋谷にも2~3軒、人気のサーファー系のディスコがあって。荻野目洋子みたいなディスコサウンドやユーロビートが流れているという。

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『サタデーナイトフィーバー』(1977)
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叶井 そういう世代ですね。

――お2人がよく遊んでいたグループというのは、チーマーみたいな感じのイメージですか?

叶井 別にそういうノリじゃないんだよな。

Kダブ アールビルの一部には、ちょっと武闘派というか、荒っぽいのもいたけど。オレらは基本そういう感じじゃなかったね。叶井俊太郎たちはナンパ師みたいな感じ。まあ、その後の渋谷には、埼玉県とかから集団で四駆で乗り付けてくるような輩も増えるんですけど。チーマーが出てくる以前の時代ですね。

#1はこちらから

#1 末期がんで「余命1年」宣告が「サルの脳みそ」を飲んで10年延命…1日60本の葉巻を吸い続けた鈴木敏夫が見たジブリをつくった男の最期の矜持

構成/伊藤綾 写真/二瓶綾

『エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』(サイゾー)
叶井俊太郎
末期がんで20キロ痩せた映画P・叶井俊太郎が中学の同級生でラッパー・Kダブシャインと振り返る“チーマー以前”の渋谷_6
2023年10月30日
¥1,650
312ページ
ISBN:978-4-866251776
『末期がん患者との対談本って、 今までにない前代未聞の企画じゃないですか?
いやーかなり楽しかった!
皆さまご協⼒ありがとうございました。
おかげさまで伝説になりそうな本が完成しました。』――叶井俊太郎 まえがきより

『夫のがんが判明した昨年は、⼈⽣で⼀番泣いた⼀年だった。
「なんで泣いてるの」 泣く私に、いつも夫は⾔う。
「泣いても仕⽅ないでしょ、治らないんだし。泣いて治るなら俺も泣くけどさ」
夫はがん告知されてから⼀度も泣いていない。』――妻・倉⽥真由美(漫画家)あとがきより

映画業界では知らない人のいない名物宣伝プロデューサー・叶井俊太郎(かない・しゅんたろう)。
数々のB級・C級映画や問題作を世に送り出しつつも結局は会社を倒産させ、
バツ3という私生活を含めて、毀誉褒貶を集めつつ、それでもすべてを笑い飛ばしてきた男が、
膵臓がんに冒された!しかも、診断は末期。余命、半年──。
そのとき、男は残り少ない時間を治療に充てるのではなく、仕事に投じることに決めた。
そして、多忙な日々の合間を縫って、旧知の友へ会いに行くことにする……。

本作は、膵臓がんで余命宣告を受けた叶井俊太郎の対談集です。

対談相⼿は、鈴⽊敏夫、奥⼭和由、Kダブシャイン、ロッキン・ジェリービーン、樋⼝毅宏、柳下毅⼀郎、宇川直宏、中原昌也、江⼾⽊純、河崎実、清⽔崇、豊島圭介といった、叶井をよく知る映画監督、⼩説家、評論家、デザイナーなどに加え、妻・倉⽥真由美との出会いにかかわった編集者・中瀬ゆかり、作家・岩井志⿇⼦、中村うさぎといった⼥傑たちまで、実にさまざまです。

話題は叶井俊太郎の特異な処世術・仕事術や、90年代サブカル映画界隈のハチャメチャすぎるエピソード、バツ3の叶井俊太郎に友⼈を紹介する奇特な⼥性たちとの思い出話など。それらが爆笑とともに(本当に笑っている)語り尽くされます。 また、対談の後半では叶井俊太郎が対談相⼿に「余命半年を宣告されたら、あなたならどうする?」と質問。末期がん患者を相⼿に⾃らの余命に思いを巡らせるという、厳かでスリリングな展開が訪れます。

この本は、ひとりの映画⼈の業界冒険譚であると同時に、各界の⽂化⼈たちの“余命半年”論を通して、命との向き合い⽅を考え直すものとなっております。
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