メーカーvs転売ヤー

キャパたちはサイズが合っていなかったり服装とスニーカーがチグハグだったり、時にはソールが汚れないように底張りやビニール袋をかぶせたりしているため一目瞭然なのですが、ドレスコードを守っているため追い返すこともできない。

そこで「アトモス」では彼らの行動を逆手にとって、スニーカー用のレインカバーを開発して販売をはじめました。雨対策はもちろん、新品のスニーカーを並びで履く時に汚したくない人たちの評判を呼び、今ではヒット商品のひとつになっています。

また、転売ヤーは同じくEC販売においても人気のスニーカーを買い占めようと動きます。スニーカーブームの初期は、人気モデルのEC販売は早いもの順でした。そのため発売開始した瞬間にサイトにアクセスし、いち早く購入ボタンを押して住所やクレジットカードの番号を打ち込んで支払いをおこなえるかどうかが鍵でした。

転売ヤーたちはそれに対抗して、botと呼ばれるプログラムを組んで、購入までの一連の流れを一瞬でおこなうようになり、オンラインショップでも発売開始から一瞬で完売するケースが増えてきました。

bot独特の一定のリズムで打ち込むタイピングの動作で見分けたりと、販売側でも対策を取るものの、今度はそれに対応して音楽のビートに合わせて打ち込むbotが登場するという始末で、最終的に誰が優秀なbotを所有しているか、という戦いになってしまう。

“スニーカーブームの生みの親”atmos創業者が明かす「転売ヤー」「スーパーコピー」との知られざる戦い30年史_2
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最終的に怪しい買い上げは手動でキャンセルするしかありませんが、こうなると一般のスニーカーファンはおろか、趣味の延長線上で楽しんでいるスニーカー投資家が入る余地もありません。そのためECでも抽選販売を導入したのですが、一足に対して数万件の応募があり当選確率は数百倍になることもしばしばで、しかも転売ヤーたちが複数アカウントを使って応募するため、狙っているモデルを買えるのは宝くじに当たるようなものです。

そんな状況に対して「ナイキ」のアプリであるSNKRSでは、購入エントリーの手続きが完了すると先着抽選画面へ遷移し抽選方式で購入できる「先着抽選販売」や、商品の発売時刻になると抽選ボタンが表示され、参加時間内に抽選に参加すると後ほど結果を知ることができる「完全抽選販売」、ランダムで発売予定日より前にリリース予定のスニーカーを予約・購入することができる「限定オファー」と、複数の購入方法を用意することで、なるべく幅広い層にスニーカーを届けるように腐心するなど、メーカーも転売ヤーの存在を無視できないどころか強く意識する状況になっていきました。