レールを敷かず、一緒に道をつくる 

学習塾を長く運営してきた中で、日本の学校で成績が良い子、学力が高いとされている子の多くは、未来のことを考えなくても、素直に勉強できてしまう子が多いと言えます。

「テスト前だから勉強しなさい」「宿題やったの?」と言われて疑問を感じることなく素直に従える子が、学校のテストで良い点数を取ってくる。でも、良い成績をとっていたから、大人になって活躍しているか、生き生きとしているかどうかというと、全くそうではありません。

これまでの経験から深掘ってみると、何かのきっかけで自分の“好き”を見つけて専門性を身につけようと頑張っているような子が、社会で活躍しています。特にこれからの時代、ますますその傾向は強くなっていくでしょう。

そのために親や大人にできることは、「子どもの好きを伸ばしてあげること」。

今回、宇宙飛行士をテーマの1つに選んだのも、JAXAがひさしぶりに宇宙飛行士の募集をする、前澤友作さん(株式会社ZOZO創業者)が宇宙に行くということで、子どもが宇宙飛行士という職業を見聞きする機会が増えるタイミングだと思ったから。興味を持ったその時が臨界点だと思っています。

興味を持った時に親が支援してあげられるかどうか。親がレールを敷くのではなく、子どもが走りたがっているところに一緒に道をつくってあげられるかどうか。小学生が好きなことや専門性を深堀りするのは簡単ではないので、その作業は大人が手伝ってあげるとよいのではないでしょうか。 

創業50年の老舗学習塾が「宇宙飛行士」スクールを開設したわけ_2
親子で共通の話題ができ、会話が増えることも得難い魅力だ(ミライメイク提供) 

なりたい姿を勉強のモチベーションに 

今ドリドリのコースとして出しているものは、どれもハードルが高い職業ですよね。宇宙飛行士はものすごい倍率ですし、医者も医学部合格という難関が待っています。安定して利益を生み出す会社を作ることも、そう簡単なことではありません。

しかし、こうした職業に憧れを持つことで、勉強を含め日々の生活や毎日のやりがいが底上げされることが、一番価値があることだと思っています。

もちろん特定の分野、例えば医者を志すようになれば、小中学校の理科、特に生物化学分野を学ぶ時は目の色が変わるでしょうし、宇宙飛行士を目指すのであれば、天体を学ぶ時にやはり心からワクワクするのだろうとは思います。

起業家コースもそうですね。今この世にはないサービスをプロダクトとして作るとなったら、政治経済、つまり社会の成り立ちやお金の流通の仕組み、税金の仕組み、公共サービスとの違いについて意欲的に学ぶでしょう。

それが学校のテストの点数に現れてくるのは多分何年か先になるだろうとは、正直思っています。でも早期キャリア教育に“あと伸び力”効果があることを、さまざまな調査から確信しています。

保護者は、できれば算数、国語、理科、社会の成績に直結して欲しいと思われるでしょう。それは至極自然なことだと思っています。

でも私は、将来なりたい姿がある、やりたいことがあるという夢を持ったお子さんの姿が、多分親御さんにとって一番見ていて嬉しいのではないかと思います。その延長上に学校の勉強を頑張ることを担保できたら最高だなという風に感じています。