言葉で40点、写真で40点
「写真を見た人がそれぞれ自由に感じてほしい」だと、見る人は困っちゃうんですよ。それでヘンテコなこといっちゃう。もしくは変なこといいたくないから黙るの。つまり反応に困って気まずいんですよ。撮影者は自分が全部理解できてるけど、見た人はそうじゃないんですね。だから「写真はわからない」って正直な感想が巷で溢れるんです。
そもそも1枚の写真にタイトルつけるのは無理がありますよ。30枚ぐらいの作品群になってようやくタイトルがつけられるもの。映画のワンシーンにタイトルをつけるのはむずかしいけど、映画にはタイトルがつくことと一緒。
言葉は写真がなくても成立する文章を書きましょう。写真展をするときはステートメントという文章を書くんだけど、いいステートメントって文章単体でおもしろいですよ。写真展って難解なステートメントばかりだから、余計に写真がわからないんですよね。
写真は文章がなくても写真単体として成立する写真を目指しましょう。矛盾することをいってるように感じるかもしれないけど、写真は写真単体でもちろん頑張ります。
だけど100点なんて目指さなくていいんですからね。ぼくだって無理です。言葉で40点、写真で40点でいいんです。合計点で80点になるから。写真のうまさだけで70点取って、言葉で5点取ってる人よりもずっといいよ。40点の写真はヘタかもしれないけどちゃんと伝わるもん。言葉と写真、それぞれが成り立つことで作品になる。
ちなみにぼくは三半規管が弱くてブランコに乗ると酔っちゃうの。撮影している最中は「気持ち悪い、はやく終われ」ですよ。言葉にするのはそういうことじゃないからね。撮ってる最中は撮ることに集中。言葉を考えるのは自分の写真を見返したとき。そこで感じたことを言葉にするの。撮ったときの感情は言葉にしなくていいんですよ。それは笑い話や裏話でいいんですからね。
真夏に撮った写真なんて全部「暑い」になるし、真冬の写真は全部「寒い」になるんだけど、そういうことじゃないからね。自分が何を感じたか言葉にしましょう。これができないとバズる写真、バエる写真、エモい写真になりがちなんだよね。
文・写真/幡野広志 (すべて書籍『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』より)
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