問題点はバス会社との競合やマイカー依存社会

LRTはたしかにバスの運転手不足を解消する手段になり得るものの、同時に発生するのがバス会社との競合問題だという。

「LRTを展開していくうえでは、(既存の)バス会社との集客エリアの棲み分けを図り、双方にメリットがあるというコンセンサスを得なくてはいけません。従来のバス事業の多くは、収益性の高い地域の利益によって、収益性の低い辺境地域の営業を支えていきました。しかし、駅前などの収益性の高い地域にLRTが入るとなると、バス会社からの反発は必至です。

ですが、バス会社側も廃線、減便が続いており、危機感を抱いているので、お互いにどのエリアを担当するか、という議論を重ねていってもらいたいです。“このエリアにLRTを展開すれば便利だ”という短絡的な話ではなく、公共交通事業者全体の共通問題として議論を進める必要があります」

バスはやがて消えるのか? 2024年問題が拍車をかける深刻なバス運転手不足…次世代型路面電車「LRT」は地方交通の救世主となりうるか_4

ほかにも、地形的な問題や潜在的な需要などの理由により、地域によっては導入を断念せざるを得ない場合もあるという。

「明治期以降、日本では路面電車の整備が進みましたが、1960年代以降はマイカーが普及し、大都市では地下鉄、中堅都市ではバスへと公共交通機関の主役が変わっていき、路面電車は年々数を減らしていました。今では車中心の交通網が敷かれていますし、わざわざLRTの新路線を作るとなると莫大な予算が必要になってしまう。

欧米では行政主導のもと、マイカーよりも公共交通を中心に置いた戦略が取られた結果、LRTが台頭し始めました。ロンドンなどの大都市においても渋滞時にはLRTを優先し、自動車に対して追加料金を支払わせる、といった措置も取られているぐらい公共交通中心の考え方になっています。

したがって、日本でLRTを導入するためには車社会の緩和、もしくは脱却を目指し、LRTが機能しやすい“まちづくり”構想を粘り強く訴える必要があるでしょう」