乗車人数が多く、正確な時間で運行可能

いったいなぜ、LRTがバス運転手不足を解決する鍵になり得るのだろうか。

「LRTはバスに比べて輸送容量が大きいですから、利用者をLRTに移行させることによりバスの本数を減らすことができ、結果としてバスの運転手不足を補うことが可能になる。基本的に専用の線路を敷くことになるため、渋滞などの影響を受けずに定時での運行がしやすく、より正確な時間で運行できてバスの代替手段にしやすいメリットがあります。

運行エリアを上手く調整すれば、バスや普通鉄道などとお互いの運行エリアをカバーし合うことができます。バス会社も不採算だった集客エリアをLRTに任せることにより、自社にとってどの路線が有益になるのか見直しやすくなります。どの路線の本数を増やすのか、減らすのか、再編することで運転手の負担を少なくする効果も期待できるんです」(戸崎氏・以下、同)

バスはやがて消えるのか? 2024年問題が拍車をかける深刻なバス運転手不足…次世代型路面電車「LRT」は地方交通の救世主となりうるか_2

LRTの稼働により、バスの本数を減らすことができ、バスの運転に割く人員を調整できるというわけだ。運転手不足による路線の廃止、減便で悩むバス会社もLRTによって、運転手の労働時間を少なくできる、と余裕が生まれてくる可能性もある。

「これまで地方住民の足を主に支えていたのはバスでした。しかし現在の地方自治体では、居住施設や地域サービスを一定の場所に集中させる『コンパクトシティ構想』が盛んです。

そのため、これからの時代は、バスよりも一度の運行で多くの利用者を輸送できる、かつ一定のエリアに路線を集約させて運行できる効率的な交通システムのほうが望ましい。そこで利用者が集中するコンパクトなエリアで運行可能で、よりスリム化した路線になり得るLRTは大注目株なんです。

近年では人口20万~50万人規模の中堅都市で、人通りが多く渋滞も起こりやすい駅前、街の中心部での導入に向けた議論が活発化してきています」

バスはやがて消えるのか? 2024年問題が拍車をかける深刻なバス運転手不足…次世代型路面電車「LRT」は地方交通の救世主となりうるか_3

さらには高齢化の進む日本社会にメリットのある交通システムだという。

「低床車両であるため老若男女誰でも利用しやすい、静音性に優れており地域住民への実害も少ない、といった人や環境に優しいという一面もLRTならではのメリット。そして車社会の地域では、渋滞を緩和するという効果も見込めます。

運転手不足だけではなく、高齢化による運転免許の返納などの事情により、交通弱者の増加が予想される地方では、前向きに導入を議論したほうがよい交通システムでしょう」