安倍政権、民主党政権との初動比較

その後、「72時間の壁」までの同本部の実施間隔も実に対照的だ。能登半島地震では第1回から継続して1日1回ペース。毎日午前10時前後に実施し、わずか20分程度で終了。一方、熊本地震では1日複数回の開催や、30分以上の開催も珍しくなかった。

また、熊本の本震発生時(4月16日1時25分)は土曜深夜だったにもかかわらず、午前5時10分(本震発生の3時間45分後)に第4回会議を実施。このように姿勢の違いが顕著なため、地震発生72時間後までの開催回数には2倍超(熊本地震:8回、能登半島地震:3回)の差がついた。

*地震発生後の時系列を比較したタイムテーブルの詳細は、筆者のtheLetter「能登半島地震の初動遅れ。安倍政権よりも棄民政策が加速する岸田政権」(2024年1月8日)参照
*地震発生後の時系列を比較したタイムテーブルの詳細は、筆者のtheLetter「能登半島地震の初動遅れ。安倍政権よりも棄民政策が加速する岸田政権」(2024年1月8日)参照

さらに、能登半島地震では「72時間の壁」を過ぎた後、岸田総理は地震と無関係なイベントに立て続けに参加し始める。筆者も参加した1月4日の年頭記者会見を「地震関連の公務」を理由にわずか43分間で打ち切った後、20時0分~20時48分(首相会見より長い48分間)までBSフジテレビの報道番組に出演。翌5日には都内ホテルで3件(経済3団体、連合、時事通信)の新年会に出席。

1月5日、記者会見する岸田首相、同日3件の新年会に出席したとされている
1月5日、記者会見する岸田首相、同日3件の新年会に出席したとされている
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岸田総理の振る舞いは、もはや被災地に関心がないようにさえ見える。ちなみに熊本地震の際に安倍総理は地震発生後5日間の期間でここまで地震と無関係なイベントには参加していない。つまり、同じ自民党政権ではあっても、現在の岸田政権による劣化や棄民政策は8年前より確実に悪化しているといえる。

ちなみに、一連の比較で熊本地震における安倍政権の対応は実にまともに見えたわけだが、その安倍政権も2年後(2018年7月)の西日本豪雨でいわゆる「空白の66時間」と呼ばれた初動の遅れを見せ、被害を拡大させている。安倍政権も決して災害対応に優れていたわけではなく、今回の能登半島地震に対する岸田政権の対応があまりに酷いから、振り返れば相対的にまともに見えているに過ぎない。

岸田総理は、安倍総理が「勤勉で真面目」に見えるほど「怠惰で不真面目」であることが浮き彫りになった。さらに言えば、「#枝野寝ろ」というハッシュタグができるほど不眠不休で東日本大震災(2011年)の対応をした民主党政権とは次元が違い過ぎて、もはや横並びの時系列比較すら不可能な状況にある。

文/犬飼淳