行き当たりばったり旅でこその偶然の出逢いが、感慨をもたらしてくれる
僕は通りすがりの旅人に過ぎないので、これ以上詳しく調べることはできないが、どうも公式に謳われている立石岬灯台ではなく、ここ能登の狼煙町にある禄剛埼灯台こそが、「日本人だけで設計・建造された初の灯台」ということで間違いないのではないかと思える。
当時の日本人はその証として、禄剛埼灯台の随所に菊の御紋章をあしらったのではないだろうか。
西洋に追いつき追い越せという気概が込められた、唯一無二の菊の御紋章付き灯台の火が、建造から140年が経過した現在も点し続けられているのは、ちょっと感慨深いものがある。
そう思いながら禄剛埼灯台を改めて眺めると、日本海の先にある諸国に向かい堂々と胸を張っているようで、なんだかこちらも背筋が伸びる気がしたりしなかったり。
わたせせいぞうごっこなんてしてる場合じゃなかったのかもしれないけど、まあいいや。
僕の車中泊旅はまったくの行き当たりばったりで、狼煙の街に行こうというのも禄剛埼灯台を訪れようというのも、その日の朝に決めたこと。
だからこんなに素晴らしくも意味のある灯台に出逢えたのは偶然そのものなのだが、本当に良かった。
次の行き当たりばったりな出逢いは何だろうか。
期待に胸を膨らませながら、僕の旅はもう少し続く。
写真・文/佐藤誠二朗