春画から見る、性におおらかだった江戸の庶民たち
江戸時代は、いまよりもずっと人々の性はおおらかでした。そんな様子は、当時描かれた枕絵、すなわち春画などからも垣間見られます。
以前僕が見て、微笑ましいと思った春画が、赤ん坊をおんぶする女性と間男の絵です。
間男はその女性と男女の関係を持ちたいがゆえに、女性がおんぶしている赤ん坊をでんでん太鼓であやしながら、後ろからその女性に挑みかかっている。そして、赤ん坊は「このおじさんは誰だろう」と、自分をあやそうとする男をニコニコと見ている。
そんな奇怪な状況ながらも性を楽しもうとする江戸っ子たちを見ていると、「当時の人々は、本当に性を謳歌していたのだな」と思わず微笑んでしまいます。
なお、春画のレパートリーは非常に広く、男女の交わりだけでなく、陰間、すなわち中高年の男性が男娼を買うような絵もあります。
武士の世界では、男性同士の恋愛は、女性との恋愛よりも格上だとされていました。僕自身はあまり詳しくないのですが、男性同士の恋愛だと男役と女役に分かれ、女役の男性は中性的な容姿であることも多かったようです。
しかし、その組み合わせがすべてだったわけではありません。たとえば、織田信長に愛された森蘭丸は、筋肉隆々としたマッチョ体型だったようで、江戸時代の絵で彼が描かれる際は、非常に立派な肉体を持つ人物として描かれています。
これら史料を見ると、性の多様性に驚かされます。江戸時代前後の日本人は、今以上に性が身近なものだったのではないでしょうか。