「思っています」「考えています」単調な説明が淡々と続き…

質疑応答では、裏金疑惑について問われる度に、回りくどい説明を繰り返した。事実と確認されたら対処、説明し、課題や原因を明らかにした後で党が対応を協議するという主旨だろうが、「そして」「そして」と接続詞を多用するため、何を言いたいのか頭に入ってこない。

また、単調な説明が淡々と続き、「思っています」「考えています」と、状況に応じて対応する姿勢を示すばかりで具体的なことは何も示されない。前向きな熱意も意気込みも使命感も感じられないため、真摯な取り組みを期待するのは難しいと、見ていた人々に思わせた。

表情を変えない岸田首相(NHKより)
表情を変えない岸田首相(NHKより)

また、何を問われても、何を話しても表情が大きく変わらなかった。手振りや仕草も少ないため感情が読み取れない。動じる様子もないのは、鈍感なのか、したたかなのか。しかし「人事の後、閣僚に問題が出た場合、どう対応するのか」と問われたときは違った。

「人事をやる段階でお答えすることが適切でないが」と前置きしながら、「懸念が生じないよう、どう対処していくのか、体制はどうあるべきか判断する」と右手を動かし、やや前のめりになって大きく頷きながら述べたのだ。

さらに一般企業を例にトップが責任を取る形、すなわち「総辞職」について問われると、うなだれるようにうつむいた。総辞職という言葉は聞きたくないのだろう。だが答える段になって頭を上にあげると、総辞職ではなく「解散」という言葉を使い、「今はそうした先の事を考えている余裕はない」と言い切った。先行きの心配より、新しい岸田内閣をどうまとめていくのかが首相にとっての最優先事項なのだろう。

翌日には4閣僚が辞表を提出し、岸田首相は囲み取材で、安倍派の閣僚を一斉交代させ、即戦力となるような人事を行なったと、すっきりした表情でコメントした。この取材での岸田首相のネクタイは鮮やかな濃いブルー。色で知的さと冷静さを示しつつ、前日のように上唇の上側を大きく膨らませるようなこともない。

すでに首相の中では気持ちが切り替わっているようだった。記者の質問には「うん、うん」「はい」と頷きながら、返答する声は明るく力がある。この様子から、閣僚の交代は首相にとってむしろ好都合だったのではないかと思いたくなったほどだ。

自民党
自民党
すべての画像を見る

増税メガネというありがたくないニックネームで、すっかりネガティブなイメージがついてしまった岸田首相だが、今回の会見でさらに、増幅させてしまったのではないか。このままでは、岸田首相の「火の玉」は、政権よりも先に支持率を燃やし尽くしてしまいそうだ。


取材・文/岡村美奈 集英社オンライン編集部ニュース班