“身内びいき”の岸田首相に安倍派が反発?

身から出たサビとはいえ、今回の閣僚人事については安倍派から反発する声も上がっている。特に、政権の要である内閣官房長官に岸田派の林芳正氏を就けたことについては「身内びいきだ」(自民党関係者)との声も根強い。

「今回の裏金問題では確かに安倍派が目立っているが、二階派や岸田派の政治資金パーティーの収入の過少記載も検察の捜査線上に挙がっている。それなのに官房長官という重要ポジションに岸田派の林氏を就けたことには、もはや呆れの声が広がっている」と永田町関係者は指摘する。

官房長官については一時、無派閥議員の起用も検討されていたようだが、結果的に首相の身内を優遇する人事となってしまったのだから、党内の不満がたまって当然だろう。

今回の人事に対する安倍派の反発を象徴する出来事といえるのが、安倍派の萩生田光一政調会長が先んじて辞表を提出したことだ。
岸田首相は、自民党の政策の責任者である政調会長について、来年度予算案を閣議決定した後の22日に交代させる方向で調整している。しかし、萩生田氏は「出処進退は自分で決める」と記者団に明言し、14日に安倍派の閣僚らとともに辞表を提出。
そのため、岸田首相は「次の政調会長を決めるまでは責任を持って仕事を進めてほしい」と萩生田氏にお願いせざるを得なくなった。
これについて永田町関係者はこう解説する。

辞表を提出した萩生田光一政調会長(本人Facebookより)
辞表を提出した萩生田光一政調会長(本人Facebookより)

「閣僚や党役員が辞める際には、実際に交代する準備が整ったタイミングで辞表を提出するのが一般的だ。それなのに、先んじて辞表を提出したのは、もう安倍派議員が岸田首相の言うことを聞かなくなってきている表れではないか」

そもそも、岸田首相が臨時国会閉会直後の14日に、事情聴取などの捜査を受けるのは安倍派だけだと決め打ちして、早期の幕引き人事を行ってしまったことについては非難の声もある。

検察の捜査は二階派や岸田派にも広がっていることから、仮に安倍派の閣僚を外したところで、後から他派閥の現職大臣や副大臣などが事情聴取を受ける事態となる可能性があり、そうなれば再び交代人事が求められることになる。
岸田首相としては、松野氏や西村氏など安倍派の事務総長経験者が事情聴取を受ける前に、内閣から外すことで政権へのダメージを減らそうとしたのだろうが、検察の捜査が本格化する前に先んじて人事をやったことが吉と出るか凶と出るかは見通せない。