幻の「M計画」、上場計画は失敗、そして倒産へ…

「90年代の後半になると、ゲーム系企業の株式上場が続きまして、ある大手ゲーム企業の社長が僕に囁いたんですよ。『コンパイルさんも上場したら、上場益が数百億円になるよ』と…そのときに、数百億円あったらテーマパークがつくれるなと思ったんです」

「ぷよぷよeスポーツ」のプレイ画面 提供:セガ  ぷよぷよeスポーツ ⒸSEGA
「ぷよぷよeスポーツ」のプレイ画面 提供:セガ  ぷよぷよeスポーツ ⒸSEGA

このテーマパーク、プロジェクト名は「M計画」と言われていたもので、自社ヒットコンテンツの『魔導物語』になぞらえたものだ。建設予定地は千葉県幕張地区で、ぷよぷよの「ぷよ」を模したドーム型の屋根が特徴的なこともあり、「ぷよぷよランド」とも呼ばれていた。

一説には、破格の1000万円をかけたといわれる「ぷよぷよランド」の完成イメージイラスト(原画)が、ネット検索をするとヒットする。要するに、コンパイルのキャラクター(IP)を総動員した壮大なテーマパーク計画だった。

千葉県松戸市の仁井谷氏の2LDKのアパートで話を聞いた
千葉県松戸市の仁井谷氏の2LDKのアパートで話を聞いた

「あのころのコンパイルは、売り上げ規模が70億円くらいあったと思いますが、そうすると次は100億円がなんとなく、見えてくるんですよ。すると経営者は売り上げを1ケタ上げるにはどうしたらいいかって考えるんです。

そのときに『M計画』(『ぷよぷよランド』)が実現すれば、これで1000億円企業イケる!って思ったわけです。おそらく孫正義さんをはじめとした、世の中の経営者もそう思うはずです。それ自体は間違っていないはず。でも、売り上げを上げるために、極端に人を増やしていったことが間違いでした。

要するに、軍隊でいえば僕は指揮官だけど、その下に部隊長とかがいなかったんじゃないかと思います。目先のことが忙しいから、そのあたりを巻きなおすことができないまま、組織がツギハギだらけになっていたんです。

建物でたとえると簡単なんですよ。平屋を二階建てにするくらいならば、なんとかなったかもしれませんが、それを10階建てのビルにするとなると、構造から何から変えなきゃいけないでしょう。それがどうすればいいかわからなかった。それでもやろうとしたから、最終的に潰れてしまったんです。平屋の状態の上に3階、4階とか建てたら、そりゃあ、潰れますよね。そのあたりの知恵がなかったんです。広島の井の中の蛙でしたよ」