そもそも「肥後守」とは、どんなナイフなのか

そこで改めてそのナイフをじっくり観察し、驚きの事実を発見した。
形状は昔使っていた「肥後守」そっくりなのだが、鞘(さや)の部分に刻まれた文字は「肥後ノ王様」となっていたのである。

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鞘には「肥後ノ王様」という文字や、シンボルマークらしきトランプのキングのような絵が刻まれている

「王様? 誰?」と不審に思い、急いでググッた僕は、そこで初めて「肥後守」というブランドについての詳しい知識を得るとともに、文頭で述べたワールドワイドなブームについても知ることになったのだ。

ここから先は、そんな僕がウィキペディアでカンニングした薄口情報に過ぎないが、「肥後守」についてのおさらいを記しておく。

「肥後守」とは、兵庫県三木市のみで製造されている、簡易式折り畳みナイフの商品名。
金属板をプレス加工した鞘(さや)兼グリップに、鋼材で作られた刃部を合わせた形状になっている。
ナイフの切れ味を左右する刃の素材にはいくつかのバリエーションがあり、同じ材質の鋼材を使った安価な“全鋼(ぜんこう)”タイプから、部分的に硬い鋼材を使った“割込(わりこみ)”というやや高価なタイプまで様々だ。

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刃部に青紙鋼という非常に硬い鋼材が用いられている「肥後守 青紙割込(大)」。普及品の中ではもっとも高価。と言っても3000円前後なのだが

「肥後守」の製造が三木市で始まったのは1890年代頃から。日常的に鉛筆を削ったり竹トンボなどの遊具を作ったりする際の道具として子供を中心に行き渡っていく。
1950年頃には最盛期を迎え、当時の子供は一人一本、ポケットの中に必ず「肥後守」を忍ばせていると言われるほど普及した。
だが、やがて鉛筆削り器やカッターナイフが普及していったのに加え、あるセンセーショナルな事件をきっかけに、ナイフそのものが社会から排斥されるようになっていく。