仕事も遊びも、もっと言えばセックスもランクが上
別に驚きはしない。彼女ならない話ではないだろう。
「あの彼を簡単に制したこの人は本物だと思いました。それに彼と違って、一緒にいると私の我儘をきいてくれるし、いつも可愛いって褒めてくれるし、仕事も遊びも、もっと言えばセックスもランクが上っていうか、いろんなことを教えてくれて、毎日がとても刺激的でした。20歳以上年上だったし、元々結婚なんて望んでなかったから、奥さんの事はぜんぜん気になりませんでした。もちろん罪悪感もありませんでした」
自分は上司の妻より若く美しく、ずっと愛されているという実感が恋を盛り上げる。
リスクはあるにしても、彼女にとって優越感を満たしたいがための相手としては、上司のような力を持った年上男との不倫はもってこいのアイテムかもしれない。
で、その上司とはどれくらい続いたの?
「1年くらいです」
別れた理由は?
「私も26歳になって、やっぱり結婚したくなったんです。周りもそろそろ決まり始めていたから、乗り遅れられないって気持ちもありました」
上司はすんなりと別れてくれた?
「未練はあったようですけど、まああちらも大人ですから」
円満に解決してよかった。
で、次の相手は見つかった?
「はい」
何よりである。相手は?
「それが、同僚女性の婚約者で……」
えつ。
このあからさまなアプローチこそ、恋愛体質の復活、略奪癖の本質
悪癖が復活したということ?
「最初はそんなつもりじゃなかったんです。でも、気が付いたらそういうことになってしまって。本当に恋愛ってままならないものですね……」
他人事のように言っているが、やったのは自分である。よくそんなことが言えるものだと呆れるが、通じることはないだろう。それが彼女である。
とりあえず呆れる気持ちは置いておいて、続きを聞くことにしよう。
「その同僚女性とはとても親しくしていました。半年後に控えた式のためのウェディングドレスやハネムーンの相談に乗ったり、時には愚痴を聞いてあげたりしていたんです。私に彼氏がいないことを知ると、もちろん上司との不倫は隠したままなんですけど、彼女、婚約者の友人を紹介するって言い出したんです。
それでダブルデートすることになりました。紹介された男性はとっても感じのいい人でした。何回か4人で会ったんですけど、私のことをとても気に入ってくれたみたいで、正式に交際を申し込まれました。でも、私はなかなかそういう気持ちになれなくて……。それで、同僚の婚約者にメールで相談したんです」
同僚の婚約者に?同僚ではなく。
「だって、紹介されたのは彼の友達ですから」
彼女は正当性を訴えたかったようだが、すでに意図は見え見えである。
このあからさまなアプローチこそ、恋愛体質の復活、略奪癖の本質というものだ。
「メールのやりとりをしているうちに、とにかく一度会って話そうということになりました。それで同僚女性には内緒で、ふたりで会ったんです。お茶だけのつもりだったんですけど、びっくりするくらい話が盛り上がって、それからご飯を食べに行って、ちょっと呑んで、すっかり酔ってしまった私は、つい言っちゃったんです。紹介されたのがあなただったらよかったのにって。最初、彼は驚いていたんですけど、実は彼も、私のことが気になっていたようで」