ドキュメンタリー映画で成功する方法

畠山 僕はこの映画を見たとき、前田監督と同じ現場に行ってはいるけれども、僕とはまったく違う視点があるんだと驚いたんです。予想を超えていて、本当に嬉しかった。だから、もっともっと多くの人に選挙や選挙取材に参加してほしいんですよ。それには僕が大金持ちになるシステムを作って、それを多くの人に見せて、「私も私も」と、どんどん新規参入してもらうしかないんでしょうかね?

博士 これは当時自民党の幹事長だった安倍さんと対談して映画の話になったときに、安倍さんが感動したと言ったのが海洋映画だったから、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「マイケル・ムーア監督の『華氏911』はまだご覧になっていないんですか?」と話を振ったら、「どうしてあなたに映画の好みを押し付けらなければいけないんですか」とスイッチが入って。マイケル・ムーアは米国にアメリカンドリームはないと言いながら映画で大金持ちになっているじゃないですかと言われるので、「いや、彼はたくさん寄付もしていますよ」と激論になったんですけどね。

前田 へえー。

博士 たしかにマイケル・ムーアは大金持ちにはなったけれどもその分を還元しようとしているし、ビル・ゲイツもそう。こんなにもお金は要らないと思って財団をつくるわけですよね。一方、いまの日本はお金儲けの人脈づくり、権力とどうつながるかがもてはやされすぎている。ボクはそこに対して拒否反応があって。畠山さんにはそうじゃないカウンターになって「24時間テレビ」の司会とかやってほしいですよね。

「こんなアンフェアなことが許されるのか!」選挙に取り憑かれた“絶滅危惧種ライター”に引退撤回を決意させた、ある国政政党とのバトル【映画『NO選挙,NO LIFE』公開記念鼎談】_5
映画『NO選挙,NO LIFE』より
すべての画像を見る

畠山 ありがとうございます(笑)。いまも取材費に窮しながらも何故か寄付とかしちゃっている状態なんですよねえ。

前田 畠山さんは人によくおごるなあと思いながら見ていました。

博士 それでいうとドキュメンタリーの森達也監督なんかも成功者にならないとダメなんだよ。『福田村事件』は興行収益が2億3千万円くらいまでいって大成功だというんだけど、ボクは「ここからだ」とスタッフに言うの。制作費数百万で始まった『カメラを止めるな』は220万人興行、32億円の収益を上げたんだから、「『福田村事件』を止めるな!!」と言っているんだよね。

前田・畠山 なるほどー!!(笑)。

博士 本当。小池都知事と松野官房長官が観るまで止めたら、ダメ。

畠山 そのやり方は選挙運動に似ていませんか?

博士 うん。選挙に学んだね、これは。選挙に出てSNSでまたかよと思われるかもしれないけれども、ぐるぐる回し続けることでだんだん世の中の認知が変わってくるんだよね。とにかく伝える側がマイケル・ムーアくらいに大スターになっていかないといけなんですよ。

畠山 いやあ、胸に響きました。

前田 ありがとうございました。

構成/朝山実

『NO選挙,NO LIFE』(前田亜紀監督)は、東京・ポレポレ東中野、TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショーで絶賛公開中!

「こんなアンフェアなことが許されるのか!」選挙に取り憑かれた“絶滅危惧種ライター”に引退撤回を決意させた、ある国政政党とのバトル【映画『NO選挙,NO LIFE』公開記念鼎談】_6

#1「ボクの政策秘書になってくれ」参院選で当選した水道橋博士の打診に“元祖・選挙ライター”の出した答えは…【映画『NO選挙,NO LIFE』を語る】

コロナ時代の選挙漫遊記
畠山 理仁
「こんなアンフェアなことが許されるのか!」選挙に取り憑かれた“絶滅危惧種ライター”に引退撤回を決意させた、ある国政政党とのバトル【映画『NO選挙,NO LIFE』公開記念鼎談】_7
2021年10月5日発売
1,760円(税込)
四六判/304ページ
ISBN:978-4-08-788067-0
選挙取材歴20年以上! 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した著者による”楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍に行われた全国15の選挙を、著者ならではの信念と視点をもって丹念に取材した現地ルポ。「NHKが出口調査をしない」「エア・ハイタッチ」「幻の選挙カー」など、コロナ禍だから生まれた選挙ワードから、「選挙モンスター河村たかし」「スーパークレイジー君」「ふたりの田中けん」など、多彩すぎる候補者たちも多数登場! 

<掲載される選挙一覧>
熊本県知事選挙/衆議院静岡4区補欠選挙/東京都知事選挙/鹿児島県知事選挙/富山県知事選挙/大阪市住民投票/古河市長選挙/戸田市議会議員選挙/千葉県知事選挙/名古屋市長選挙/参議院広島県選出議員再選挙/静岡県知事選挙/東京都議会議員選挙/兵庫県知事選挙/横浜市長選挙
amazon 楽天ブックス honto セブンネット TSUTAYA 紀伊国屋書店 ヨドバシ・ドット・コム Honya Club HMV&BOOKS e-hon
黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い
畠山 理仁
「こんなアンフェアなことが許されるのか!」選挙に取り憑かれた“絶滅危惧種ライター”に引退撤回を決意させた、ある国政政党とのバトル【映画『NO選挙,NO LIFE』公開記念鼎談】_8
2019年11月20日発売
924円(税込)
文庫判/376ページ
ISBN:978-4-08-744049-2
落選また落選! 供託金没収! それでもくじけずに再挑戦!
選挙の魔力に取り憑かれた泡沫候補(=無頼系独立候補)たちの「独自の戦い」を追い続けた20年間の記録。
候補者全員にドラマがある。各々が熱い思いで工夫をこらし、独自の選挙を戦っている。何度選挙に敗れても、また新たな戦いに挑む底抜けに明るい候補者たち。そんな彼・彼女らの人生を追いかけた記録である。

2017年 第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作

【目次】
第一章/今、日本で最も有名な「無頼系独立候補」、スマイル党総裁・マック赤坂への10年に及ぶ密着取材報告。
第二章/公職選挙法の問題、大手メディアの姿勢など、〝平等"な選挙が行なわれない理由と、それに対して著者が実践したアイデアとは。
第三章/2016年東京都知事選挙における「主要3候補以外の18候補」の戦いをレポート。

【選考委員、大絶賛! 】
キワモノ扱いされる「無頼系独立候補」たちの、何と個性的で、ひたむきで、そして人間的なことか。――姜尚中氏(政治学者)
民主主義とメディアについて、今までとは別の観点で考えさせられる。何より、作品として実に面白い。――田中優子氏(法政大学総長)
ただただ、人であることの愛おしさと愚かさを描いた人間讃歌である。――藤沢 周氏(作家・法政大学教授)
著者の差し出した時代を映す「鏡」に、思わず身が引き締まる。――茂木健一郎氏(脳科学者)
日本の選挙報道が、まったくフェアではないことは同感。変えるべきとの意見も賛成。――森 達也氏(映画監督・作家)
(選評より・五十音順)
amazon 楽天ブックス honto セブンネット TSUTAYA 紀伊国屋書店 ヨドバシ・ドット・コム Honya Club HMV&BOOKS e-hon