行政の介入も難しいヤングケアラーの解決策

――政治にも、もっとできることがあると思いますか?

石井
 正直に言うと難しいんですよね。もちろん、体罰が虐待として保護対象になったのと同じように、将来的にはヤングケアラーも保護対象になることはあると思います。

ただ、虐待は加害が行動としてあるからわかりやすいですが、親の病気や介護となると線引きが難しい。要介護4ならいいのか、要介護1だとどうか、だったら親のシャブ中はどうなんだと。だから、時間は相当かかるんじゃないかなと思います。

作家・石井光太さん
作家・石井光太さん

相葉 しかも、こういうケースは子ども本人が「大丈夫です」と言うじゃないですか。私も、ずっとそう言っていた記憶がありますし、被虐待児ですら本人がヘルプを出さないと行政は入っていけないので、そこに関しては本当に、まだまだ「無理なのかな」ぐらいの気持ちになってしまいます。

――ヤングケアラーの経験者として、相葉さんがこんなサポートがあったらよかったと思うことはありますか?

相葉
 大人ならデイサービスに申し込めたり、あるいは有給を取得しながら介護できるのに、どうして子供はそういった物理的なサポートが受けられないのかと思います。相談窓口のようなメンタルサポートに関しては、わりとできてきたほうだとは思うんですけどね。

石井 そこは本当に重要な話だと思います。介護者がいない被介護者と、その子どもの両方を同時になんとかしないといけないので、結局は介護福祉というものを根本から見直す必要があるんですよね。

相葉 ただ、行政もいまやヤングケアラーの認知を広げようとはしていると思うので、その流れに私も少しでも加われたらなとは思っていて。

もちろん、知ったところで現時点ではどうしようもできない問題なんですが、知ることで変わることも絶対にあるんです。例えば「あなたもヤングケアラーかも?」といったプリントを配布したりして、子ども自身に自分がヤングケアラーだという認識を持たせることも重要だと思います。

石井 学校の先生にも、この漫画を読んでもらいたいですよね。進路相談でもなんでも、ふだんから子どもたちに接しているのはやっぱり先生なので、子どもたちが抱えている問題の背後にある複雑な環境を認識するだけでも、変わってくる部分は全然あると思いますから。

相葉 そうですね。いまはそうやって、いろんな方面からの認識を少しずつ深めていく段階なのかなと思います。

前編はこちら

《前編》「えらいねと言われると、もっとしっかりしなきゃというメンタルにどんどんなっていく」15人に1人がヤングケアラーの日本で子どもたちを覆う息苦しさ〈母と祖母をケアした漫画家・相葉キョウコ〉

取材・文/森野広明 撮影/高木陽春