大風呂敷とワクワクするような目標設定は紙一重
2016年シーズン前、大谷選手はその年の目標についてこう語っています。
「20勝&20本です。20勝は軽く言える数字ではないですし、1年目じゃ言えなかった。20勝して20本打てば、日本一にも近づくんじゃないかと思いますし、そう言って喜んでもらえるなら言いますよ」(『不可能を可能にする大谷選手120の思考』ぴあ)
大風呂敷とワクワクするような目標設定は紙一重なのです。日本の社会では、まだまだ「目標実現」を重視します。しかし、それを優先すると、小さな成功で満足してしまいます。結果、組織のモチベーションの最大化も期待できません。
多くの心理学の実験によれば、控え目な目標設定で目標実現を優先するグループのリーダーは、メンバーに舐められるだけでなく、それ以降メンバーは、そのリーダーの指示に従わなくなるという結果が出ているのです。
日本人と欧米人の思考パターンの違いはいくつかありますが、減点主義の日本人と加点主義の欧米人、というのもその一つでしょう。たとえば、少年野球の現場で日本のコーチは、「選球眼を鍛えて四球を選んで塁に出ろ!」と、アドバイスします。
確かに、ミスを最小限に減らしてなんとか塁に出る選手は、一定の成果を上げることはできますが、大きな成果を上げることは不可能です。もちろん、組織にはある程度貢献できますが、この選手が一流プレーヤーになることはありません。
一方、欧米のコーチは、「三振してもいいから思い切りバットを振ってこい!」と、アドバイスします。失敗を厭わず、果敢に行動に出る欧米の選手は三振も多い反面、ホームランも多いのです。
どちらが大きな成果を上げることができるか。もちろん、後者であることは言うまでもありません。三振という失敗とホームランという成功を天秤にかけて、ホームランを打つという大きな成果を求め続ける選手こそが大成するのです。
欠点を修正しても、それは武器にはなり得ません。得意なもので勝負することに命を懸ける。それこそが、その人間の武器になり、大きな成果を上げる大切な要因なのです。
欧米のビジネス界では、「生きているうちに達成できるような目標の水準は低過ぎる」という教えが浸透しています。大事なことは「目標を実現すること」ではなく、「グロスの成果を最大化するような目標を掲げること」なのです。