習慣化の持つパワーを活用

行動デザインの研究の世界的権威であるB・J・フォッグ博士が作成した行動モデルを図表5-1に示します。横軸は能力であり、縦軸はモチベーションです。図の右側に行けば行くほど行動は実行しやすくなり、図の上に移行すればするほどモチベーションが高くなければ実行できないのです。
行動曲線の上側が行動可能な領域であり、行動曲線の下側が行動が困難な領域です。図表5-1のように、行動は繰り返せば繰り返すほど習慣化して、①→②→③のように右側に移行していき実行しやすくなるのです。たとえば腕立て伏せを例に取って考えてみましょう。
壁腕立て伏せ2回から始めると、習慣は簡単に身につくのです(図表5-2)。一方、最初から腕立て伏せ20回から始めると、この行動は実行しにくいために習慣として定着する可能性は低くなるのです。

大谷翔平選手に学ぶ目標設定のしかた「小さい夢や習慣が大きな夢を実現させる」という当たり前のことを継続する力_2

もちろん、その行動が「好きで得意」なら、行動曲線が下のほうに移行することは言うまでもありません。つまり実行しにくい行動でもモチベーションがそれほど高くないときでも習慣に定着しやすいのです。ベストセラー「バカの壁」の作者で解剖学者である養老孟司さんはこう語っています。

「自分が好きなこと、それしかやらない。そう決めるのは自分である。そう決めてちっとも差し支えない。(中略)本当に好きなら苦労をいとわない。苦労が苦労ではないからである。苦労したくないなら、結局それほど『好きではない』のである」(日本経済新聞)

大谷選手にとっても、おそらくバットを振る作業や、キャッチャーのグラブにボールを投げ込む作業は、その作業だけを捉えたら面白くない作業のはずです。それを「好き」で「得意な」作業に変えてくれたのは、紛れもなく習慣化の持つパワーを活用したからなのです。習慣化こそ、私たちの夢を実現する最強の要素となり得るのです。