統計学者、そして教育者
ナイチンゲールは、統計学者としても大きな功績を残した。軍隊において、衛生的な環境の維持がいかに重要であり、不衛生がいかに多くの生命を奪うかを政府に説くため、緻密な統計解析を行ったのである。
多種多様な自作のグラフを用いた彼女の資料は、当時としては画期的で、圧倒的な説得力があった。1859年、ナイチンゲールはイギリス王立統計学会のメンバーに選ばれるという、女性として初めての快挙を成し遂げた。
また、ナイチンゲールはロンドンに世界初の看護師養成学校を開いたことでも有名だ。長らく、身分の低い召使いとして扱われていた看護師という存在を、適切な訓練を経た正式な専門職として確立したのも彼女の偉大な功績である。
『看護覚え書』の中でナイチンゲールは、後世まで残る有名な理論を書いている。
「自分がそこにいるときにすることを、自分が不在のときにも行われるよう管理する方法を知らないと、看護の結果は台無しになったり完全に逆効果になったりするだろう」(著者訳)
ナイチンゲールは、自分が不在のときも同じクオリティの業務が行われるよう情報を管理し、組織として機能を高めることの大切さを説いた。
現代社会でも、「自分がいないと回らない」が口癖のリーダーがいるかもしれないが、ある特定の人材に依存する組織は脆弱で、非効率である。そうした組織に対し、リーダーがリスクマネジメントの観点から改善の必要性を感じるならともかく、誇らしく思うとしたら筋違いだ。ナイチンゲールの言葉は、今なおあらゆる組織人の心に響く重要なマネジメント論といえるだろう。
アルコールを愛する日本人の半数に食道ガンのリスクが…
発症したら100%死亡する恐ろしい感染症
文/山本健人
写真/shutterstock












