中学時代の指導者の“ひと言”

中学に上がると地元の硬式野球チーム『加賀ボーイズ』に入団。しかし、野球に対するモチベーションは決して高くなかった。野球を続けたいという意思こそあったが、プロはおろか、高校で甲子園を目指そうとすら考えていなかったという。中学2年生のある日、チームの監督から進路希望を聞かれた。そこで、山﨑颯はこう答えている。

日本シリーズでの活躍も期待される山﨑颯一郎
日本シリーズでの活躍も期待される山颯一郎

「普通に公立高校に入って、将来は父親よりもいい仕事に就きたいです」

思春期特有の“スカし”もあったのかもしれない。しかし、この答えを聞いた監督は返す刀で山﨑颯にこう告げる。

「アホか。お前はプロを目指せ!」

当時のことを山﨑颯はこう振り返る。

「正直、言われた瞬間は『は? なに言っとんねん』と思いました(笑)。ただ、監督から急にそんなことを言われて、初めて将来のこと、野球への取り組み方をもう一度考えるようになったんです」

ちょうどこのころ、身長がさらに伸びたのも大きかった。中学3年時には身長が187センチに達し、日本代表にも選出。身体の成長と技術的な成長が合致し、名門・敦賀気比高校への進学も決まった。

その後の活躍は前述のとおり。山﨑颯自身も、「野球人生を振り返っても、一番成長できたのは監督に『お前はプロに行け!』と言われた中学2年生から。その意味では本当に感謝しています」と語っている。

もしあのとき、「公立高校に行きたい」という山﨑颯に監督が「そうか、じゃあ受験勉強も頑張らないとな」と答えていたら、今の彼はなかったかもしれない。

あれから11年――。野球に真剣になり切れていなかった少年は、リーグ3連覇を果たしたチームの主力として、“日本一”をかけた戦いに挑む。日本シリーズでも“次世代クローザー”山﨑颯一郎の投球から、目が離せない。

取材・文/花田雪

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