悲しみに暮れる余裕もないガザの現況

イスラさん一家は、7日の衝突以降、すでに4回避難場所を移動している。

今いるラファはエジプト国境から非常に近く、国境を標的とした攻撃があるたびに恐怖に苛まれるという。イスラさんは何度も言葉に詰まりながら近況を話してくれた。子どもたちの前では涙を流さないようにしているのか、泣くのをぐっとこらえる様子が感じられた。

「どうして民間人のいる場所を攻撃するのかわからない。通っていた大学も壊され、近所のパン屋も先日爆撃を受けた。貴重な食糧が手に入る場所だったが、それすらも失い、私たちは途方に暮れている」

18日、パレスチナ自治区ガザの病院で親族の遺体にすがりつく女性 写真/共同通信
18日、パレスチナ自治区ガザの病院で親族の遺体にすがりつく女性 写真/共同通信
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婚約者との新生活を間近に控えていたカリマンさんと、第2子の出産を控えるイスラさん。何の罪もない平穏を生きてきた市民が、今では空爆や爆撃に怯える毎日だ。たった2週間のうちに数十人もの家族や友人を失ったが、悲しみに暮れる余裕もない。次の攻撃が襲ってくる。そんな状況が、今のガザには溢れている。

取材・文/鈴木美優 写真提供/Kariman AlMashharawi

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