ファイザーでも100万人摂取して死んだのは6.1人

ファイザーが約2.9億回、モデルナが約0.8億回、武田はそれに比べると非常に少なく約29万回しかありません。なお、ファイザーとモデルナはmRNAワクチンですが、武田は不活化ワクチンであり、ワクチンの種類が異なります。3つを合わせると約3.7億回接種されていますが、これがどれほど多いのか、インフルエンザワクチンの接種回数と比べてみましょう。

インフルエンザワクチン接種回数は2020年度の分までが公表されています。それを見てみると、一番多いのが20年度の2367万7920回で、その次が19年度の1812万2888回、この2年間を合計すると4180万808回です。これと比べると、コロナワクチンの接種回数は、約9倍あります。まったく規模が違うことがよく分かります。

では、副反応疑い報告のうちの死亡例をメーカーごとに分けて確認します(図17)。

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図17 メーカーごとの死者数。『全検証 コロナ政策』より

ファイザー1782人、モデルナ215人、武田1人。ただ、接種回数が全然違うので、絶対数を比較してもあまり意味がありません。そこで、100万回あたり死者数で見てみましょう(図18)。

ファイザー6.1人、モデルナ2.6人、武田3.5人。ファイザーがモデルナの倍以上となっています。武田は母数が全然異なるのであまり参考にならないと言ってよいかもしれません。これを多いとみるのか少ないとみるのかは、人によって異なるでしょう。なお、パーセンテージで表記すると、それぞれ0.00061%、0.00026%、0.00035%です。

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図18 メーカーごとの100万回あたりの死者数。『全検証 コロナ政策』より

心筋炎・心膜炎だとどうなのか

これがどれだけ低いのか、飛行機事故に遭う確率と比較してみましょう。米国国家運輸安全委員会(NTSB)の調査によると、米国内で航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%です 。

したがって、副反応による死亡疑いで報告される確率は、最も数字の高いファイザーであっても、米国で飛行機事故に遭遇する確率より低いということです。

次に、心筋炎.心膜炎の発症者の絶対数を見てみましょう(図19)。

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図19 メーカーごとの心筋炎・心膜炎の発症者数。『全検証 コロナ政策』より

さらに、こちらも先ほどと同じように、100万回あたりの発症者数で見てみましょう(図20)。

心筋炎の方について、武田が1位となってしまいますが、母数が全く異なる上に絶対数はたったの1ですからあまり参考にならないでしょう。モデルナについて、心筋炎の発症者数はファイザーの倍以上という結果になりました。しかし、ファイザー・モデルナ共に、死亡例よりも心筋炎・心膜炎の報告が少なくなっています。

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図20 メーカーごとの100万回あたりの心筋炎・心膜炎の発症者数。『全検証 コロナ政策』より

ただ、これらはあくまで「疑い」報告です。このうち、ワクチン接種との因果関係が肯定されたものはどれくらいあるのでしょうか。

因果関係の評価で中心となるのは、PMDAによるα・β・γ評価です。各評価の意味は次のとおりです。

. α=ワクチンと症状名との因果関係が否定できないもの
. β=ワクチンと症状名との因果関係が認められないもの
. γ=情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの

そして、評価は次のとおりでした(図21)。

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図21 メーカーごとのα、β、γの件数。『全検証 コロナ政策』より

要するに、因果関係が否定できない、というα評価となったのは、現時点でたった1件だけです。それ以外は、ほぼ全部「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」γ評価とされました。はっきりと「因果関係が認められない」β評価となったのも合計で11件しかありません。

唯一のα評価となった事例は、40代の女性がワクチン接種後わずか24分後に心肺停止に至ったという極端なものです。厚労省の審議会の資料には下記の記載があります。

・死亡診断書の病名として、急性左心不全、致死的不整脈とされており、死亡後のAi(死亡時画像診断)からは高度な肺うっ血の所見が認められた。初診時に皮膚症状、消化器症状なく一般的なアナフィラキシーで認められる所見がなかったこと、及び泡沫(ほうまつ)状の血痰を多量に排出したことなど急性肺はい水腫(すいしゅ)を想定する症状であった。観察室に移動するときに、接種前から実は具合が悪かったという事を訴えられており、ACS(急性冠症候群)やARDS(急性呼吸促迫症候群)をきたしうる病態も鑑別として考えられる。ワクチン接種後であったことからアナフィラキシーの存在は強く疑われた。
・アナフィラキシーショックであった場合には、最重症型であったと考えられる。最重症型のアナフィラキシーは、非常に稀まれな病態であり、致命率も高い病態である。残念ながら病理解剖がされていないこともあり、最終的な病態の解明には至らなかった。