横のつながりを持って「みんなで頑張る」
──コンテンツを見る側、例えばファンの人々の心理も変わりました?
たぶんそうだと思います。(コロナ禍という)圧倒的なファンタジーが現実に起こってしまったじゃないですか。今まで「現実から逃げるためのファンタジー」としてエンタテインメントが機能していた側面っていうのは確実にあったと思いますし、今後も当然ゼロになることはないと思うけれども、現実から逃げるためのばれない嘘を尊ぶ形から、本当のものをちゃんと見たいという方向に変わってきているように思います。
本当のものが1番感動を生むのは昔からですが、もっとカジュアルに本当のものを見たい気持ちは増えているんじゃないかなと思います。僕も「本物」っていう言い方は好きじゃないんですが、でも見せかけでなくて実(じつ)のある「芯のあるエンタテインメント」「芯のあるきれい事」「芯のある関係」を求める傾向は、コロナ以降で加速したように思います。
自分はコロナ前からそういう形でやっていましたが、あつれきをそこここに生んでしまいました。ファンの方からも「なぜあなたは嘘をつかないのだ」「なぜあなたはステージに立つ人間なのにフィクションをしないんだ」などと言われ続けてきて、それは僕自身の大きなトラウマにもなっていたんです。
でも、コロナ禍以降およびBMSG設立以降、「THE FIRST」以降はどんどんとそれが薄くなりました。今はスーツを着てネクタイを締めていても、ステージ上にいても、BE:FIRSTのレコーディングに立ち会っていても、どんなときも自分のままでいられます。
スタッフと話すときとアーティストと話すとき、ステージの上からファンの方に話すときのテンションも常に変わらずにいられる。いつでも自分のままでいられるので、生き物としてすごく楽なんです。
「びっくりするくらい(B)マジで(M)素のまま(S)頑張っています(G)」で、BMSGなんですよ(笑)。
──これから新しい音楽ビジネスをつくっていくのに、必要なものは何ですか?
ここまで話してきたことに加えるとしたら、他とのユニティのような気がします。
1つの権利や利益を独占することが「成功」だった時代があったと思うんですが、これからは、横のつながりを持って「みんなで頑張る」ことが大事な気がしますね。
韓国ではBTSが世界的な名前の残し方をされています。彼らは急に大ヒットしたかのように思われがちだけれども、K-POPは、(1998年にデビューした)SHINHWA(神話)から東方神起、BIGBANG、BTS、NCT、Stray Kidsなどへと切磋琢磨(せっさたくま)し合いながらバトンをつないでいっている。
それこそユニティみたいなことがないと。経済も自由競争がなかったら発展しないじゃないですか。だから、ユナイトとフリーダムが重要だと思いますね。