嘘が通用しなくなり、本気が尊ばれるように
──本気を伝えていくなかで、SKY-HIさんが意識されていたことは?
圧倒的な性善説であり真理でもあると思うんですけど、本当は本気でやりたくない人なんていないと思うんですよ。例えば本気で頑張ることは恥ずかしい、照れくさい、かっこ悪いっていう環境にいたらそうなるし、本気で頑張っても失敗したら恥ずかしいっていう環境にいてもそうなると思うんです。
合宿では、俺が1番恥ずかしいことしていたんで。だって会って1週間でみんなと一緒にお風呂に入って恥ずかしい部分を見せている(笑)。冗談はともかく、ちゃんと本気で接してきて、恥ずかしい部分を見せてきました。
今まで表で話していないことで僕が大事にしてきたことがあるとしたら、例えば100人いれば100人、15人だったら15人、BE:FIRSTだったら7人ですが、完全に同じことを考えている人はいないので、自分が持っている強烈な意志とか旗のもとに彼らを引っ張っていく形はあまり適してないんだろうなとは思っていました。
大事なのは、掲げた旗に対して付いてきてくれた方が、なぜ「いいな」と付いてきてくれたのかをちゃんと気にすること。どうしてBMSGや「THE FIRST」に賭けてくれたのかという理由はそれぞれ違うし、向かう先や幸せの形もそれぞれ違う。そこを忘れずに彼らときちんと接することができれば、きっと信頼していただけると考えました。
そうした関係の上で、自分がたまたま彼らよりちょっと早く生まれ、アーティストとしても知見や知識があり、アドバイスできるようなことがあるので、それを彼らにお渡ししていくということです。
──先程、「嘘をつかない」というのがヒットの根っこのところにあるという話をされていましたが、コロナ禍を経て「ものの作り方」は変わってきたと感じられますか?
それは、すごく思います。圧倒的に嘘や見せかけがばれるようになったと本当に思います。
昔だったらプロパガンダやハイプ(過剰な宣伝)がいい方向に転がっていたと思いますが、それが通用しなくなった。実(じつ)のない信仰みたいなものも、どんどん(虚像が)めくれていっていると思います。嘘が通用しなくなった一方で、本気が尊ばれるようになったと思うので、自分にとっては本当に20年以降の世の中のほうが生きやすいし、やりがいもあるなあという気はしています。
──ヒットづくりを仮に考えていくとすれば、本気のコンテンツをどんどんぶつけていく以外にないだろうと。
それしかないと思いますね。かつての新自由主義や10年ほど前にハック思考がはやっていた頃って、数字や影響力が「目的」であり、プロダクトそのものは「手段」だったと思うんです。
それを否定するわけではありませんし、本気で突き詰めているのであれば1つの美学だし哲学だし美しいことだと思うのですが、今の時代に1番ヒットする確率が高いものが何かと言ったら、1人の人間の中にある、ものすごく純度の高い「本当にやりたいこと」を、本当にやりたい形でフルにやれたときに生まれると思います。
きれい事のように聞こえるかもしれませんが、ドライに考えてもそう思いますし、とにかくその「純度の高さ」が大事なんじゃないでしょうか。