恋愛は個人競技
ただ、実はもう一つ、(3)見合い結婚と恋愛結婚の逆転、を挙げる識者もいます。
独身研究家でコラムニストの荒川和久氏もその一人です。彼は「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社)において、「’20年時点の生涯未婚率(男性)のグラフを20年前にずらしてみると、『見合い結婚』比率の減少カーブと、鮮明な相関関係にあることが分かる」としました。見合い結婚の割合が減少(恋愛結婚が増加)した分、生涯未婚率も上昇したと考えられる、というのです(同’23年2月15日掲載)。
すなわち、かつての「見合い」は会社の上司や親戚、あるいは近所の世話焼き人など、仲介者と力を合わせて相手を攻略する〝チームプレー〞だった、でもそれが「恋愛」という〝個人競技〞に移行した分、結婚が減ってしまった、と見ることもできるでしょう。
日本では’60年代半ば〜後半にかけて、それまで多数派だった見合い結婚を「恋愛結婚」が逆転しました(図表6)。理由は後述しますが、その後も恋愛結婚の割合はしばらく上昇し続け、いまや結婚カップルの8割から9割を、恋愛結婚が占めています。
正確にいえば近年、マッチングアプリをはじめとしたインターネットによる婚活サービスの伸長によって、そのものズバリの恋愛結婚は約75%にまで減りましたが、それでも、依然として「見合い」は1割弱(9.9%)、残る「ネットで(出会って結婚)」の約15%も、結局は多くが「ネットで出会う→デート(交際)→恋愛→結婚(を検討)」といったステップを踏んでいるはずです。よって、いまも恋愛を前提とした結婚が8〜9割にのぼると考えられます(「第16回出生動向基本調査」)。
恋愛という個人競技は、自由度が高い分、放任(ほったらかし)と表裏一体です。’70年代以降の若者は「自分自身が好きな相手と結婚できる」との自由を手にした半面、「自力で恋愛して、結婚相手を見つけなければいけない」との現実にも直面しました。
こうなると、異性にみずからの魅力をアピールするのが苦手な男女、あるいは「年収」や「学歴」「見た目」「雇用形態」などで一定水準をクリアしていない(と自身が考える)男女は、明らかに苦難を強いられます。
つまり、「いずれ結婚したい」と考えながらも、現実には異性への〝モテ〞に左右される「恋愛」という通過儀礼を経なければ結婚できない、だからこそ、’60年代半ば以降、周囲が強力にお膳立てしてくれる見合い割合が減った分、(約20年後の)’80年代半ば以降に、適齢期の未婚割合が上昇し始めたのではないか、とも考えられるのです。
もともと日本人の多くは、「恋愛結婚」に向かないタイプだったのかもしれません。
文/牛窪恵 写真/shutterstock
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