知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えて

一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。ちょうど図2に示したようなイメージです。

先ほど、IQ70未満が知的障害に該当するというお話をしましたが、IQ値だけでは実際の子どもの状態がわかりにくいこともあります。検査結果を、実際の心(精神)の発達度合いで表した「精神年齢」を使うこともあります。

例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子にとって何が必要か、が見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子が混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。

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図2 発達の凸凹から見た発達障害と知的障害の位置づけ。『境界知能の子どもたち
「IQ70以上85未満」の生きづらさ』より

発達障害は、知的障害を伴うことは多くはない

そして、そのゆっくりとした成長が成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。

発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴いますが、知的障害の場合は、知的機能の発達水準が全体的にゆっくりな(年齢相応の能力が伴っていない)ために、定型発達の集団生活の中にいれば、さまざまな困難が生じてきます。例えば、勉強が苦手、対人関係が苦手、臨機応変な対処が苦手、感情コントロールが苦手、不注意……などです。

一方、発達障害は、知的障害を伴うことは多くはないものの、こだわりや不注意といった行動面、コミュニケーション能力や学習能力など、ある特定の分野に関して困難が生じると考えるとわかりやすいでしょう。

発達障害では、定型発達児の認知機能にプラス要素やマイナス要素が混在している凸凹しているようなイメージです(例えば、記憶力が高く興味のあることへの集中力は高いけれども、想像する力が弱いなど)。

ただ発達障害も知的障害も似ているところもあります。両者は苦手なところでみると共通点もあり、知的障害を支援するプログラムは、もちろん例外はありますが発達障害にも応用が利くと考えられます。