こども政策の地域格差

旭川市の教育長は、私が直接面談した際「旭川市には、いじめ対応の専門家がおらず、第三者委員会の委員への報酬が条例で日当7700円と定められていることもあり、経験のある弁護士等に依頼しようにもなかなか難しい事情がある」と証言しました。

旭川市は、2021年の調査で人口32・9万人、北海道で札幌に次ぐ第二の都市です。そのような大都市ですら、こども政策に予算を割くことができず、こども政策担当者も専門家も集められないというのであれば、他の小さな市区町村はどうなるのでしょうか。

全国47都道府県にある1741の各市区町村の全人口の中央値は2万3000人です。当然、もっと人口が少なく、担当者や専門家が不在な地域はごまんとあるわけで、事実上ほとんどの自治体がこどもを専門的にケアする職員を配置できていないということは明らかです。

自慰行為強要、動画流出、自殺未遂…それでも教育委員会は「いじめ」と認定しなかった旭川女子中学生いじめ凍死事件は「こども庁」が必要だと考えた理由のひとつ_4
幼い頃の爽彩さん
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妊娠、出産、児童養護、保育、教育、医療……すべてにおいて、地域格差が生じている。生まれた場所によって、いざという時に救われる命と救われない命があるということは、この日本で許されることではありません。

このことが、国が責任を持ってユニバーサルサービスとしてこども政策を実施していく、「こども庁」が必要だと考えた理由のひとつです。

#1 政治のゆがみが招いた3つのこども虐待・いじめ事件…こどもの命が守られない日本で「こども庁」が必要な理由
#3 「川遊びしていた子供が溺れて死亡しました」毎年夏になると発生する不慮の水難事故死…再発防止に何が必要なのか?

文/山田太郎

『こども庁ー「こども家庭庁創設」という波乱の舞台裏』(星海社)
山田太郎
自慰行為強要、動画流出、自殺未遂…それでも教育委員会は「いじめ」と認定しなかった旭川女子中学生いじめ凍死事件は「こども庁」が必要だと考えた理由のひとつ_5
2023年8月23日
¥1,650
224ページ
ISBN:978-4-06-532899-6
自民党を「こどもを語れる場所」に変えた1年半の疾風怒濤伝!

2023年4月に発足した「こども家庭庁」。その創設の舞台裏には、自民党の常識にとらわれない新しい政治の「闘い方」があった! こどもの虐待や不登校、自殺者が多発する日本の厳しい現状を「こども緊急事態」として菅義偉内閣総理大臣に「こども庁」構想を直談判した2021年1月24日、闘いは始まった。「総裁選」や「党内や官僚からの抵抗」、「こども庁名称問題」、「メディアからの批判」幾多の危機にあって、命綱となったのは「ゲリラ的勉強会」、「デジタル民主主義」という驚きの政治戦略だった! 本書は、「こども庁」構想の発起人の一人である著者が、庁の発足までの舞台裏を書き下ろした疾風怒濤の政治ドキュメンタリーである。
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