歌舞伎町の女性にとってのかけ込み寺のような存在
雑魚寝スペースでは、関西弁の子がホストのグチを言い、それを聞く2人組がいた。
女の子A「3日間で60万円使ったって言ったやん、なのに無反応。許されへんやろ」
女の子B「そういうこと、もう言わないって言うてたやん」
女の子A「そうやけど…」
パウダールームにはヘアアイロンで髪を整え、化粧をする女子も複数名いた。みんな、不自然なほどアイシャドウとハイライトを塗り、無理やり涙袋を描いている。また、電話を片手に「今日何時? 21時に店ね、りょーかい」などと、ホストとやりとりしてると思われる子も。
再び飲食スペースに戻ると、先ほどの金髪格闘家ふうの女性が「それ、どこで買ったの?」とツッコみたくなるような真紅のワンピースに着替え、髪もメイクも整えて乳酸菌飲料を飲んでいた。
いったん大久保公園付近も歩いてみようと、受付に声をかけると「チェックアウトの時間までには戻ってきてね、いってらっしゃ〜い」と、客への対応というよりも学生に門限を伝える寮母のような喋り口調だった。
入店してくる20代前半くらいの金髪女性が「ただいまー! 今日はちょっとさ、お金ないからトイレだけ借りてってもいい?」と声をかけると、「いいよー」と“寮母”。ここは、歌舞伎町の女性にとってのかけ込み寺のような存在なのかもしれない。
大久保病院前の地べたに座る女性に声をかけると、この女性もかつて「X」に寝泊まりしていたとがあるという。
「カプセルルームは、『X』の中ではVIPルームのような場所だけど、どこで寝てもイビキがうるさいんだわー。手ぐせが悪いヤツ多くて、私はケータイの充電器を盗まれた。さすがに財布を盗まれたとかは聞かないけどね。盗難がバレると出禁だし、それはみんな困るし。でもホストクラブの締め日(その月の最終営業日)だけは行きたくない。金を使い果たして荒れてる女、多いから」
この女性によれば、ホス狂や立ちんぼ嬢だけでなく、未成年の少女が泊まっていたこともあるという。
「仙台から来た16歳の女の子がメンズ地下アイドルの推しに会うために泊まっていたのも見ました。あそこに泊まるのには身分証明とか必要ないから、わりと紛れ込んでるんですよ」
記者の滞在中は、見るからに未成年っぽい子は見かけなかったし、警戒していた盗難被害にも遭わず、「X」ならではの人間模様を楽しむことができた。しかし9時間ほどの滞在中に何度も浴槽に浸かったせいか、心なしかアソコが沁みる気が…。
整ったのか、乱れたのか、よくわからないまま新宿駅に向かうと、キャッチに「お姉さん、ホストの初回どう?」と声をかけられた。これまで歌舞伎町に何度訪れてもお声がかからなかったキャッチから、人生で初めて声をかけられた。ホス狂い御用達銭湯とサウナに浸かりまくった影響で、すっかり“仕上がった”のかもしれない。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班