なぜ日本の音楽アーティストは「パワハラ」「セクハラ」「いじめ」「虐待」といった社会的メッセージの発信が少ないのか?
日本屈指の“社会派ラッパー” Kダブシャインが、アメリカと日本のヒップホップシーン解説を通して、日本にはびこる自己責任論について語る。『Kダブシャインの学問のすゝめ』(星海社)より一部抜粋・再構成してお届けする。
Kダブシャインの学問のすゝめ#2
人を見るときに一番重要なのは…
最後にこれだけは書いておきたいのが、人にはそれぞれ「価値」があるということだ。たいていの人が、誰かの「価値」というと、その人が今の立場でどんな役に立つのか、何をたくさん持っていて、どれくらいの資産や財産を所有しているか、それを試算して、その人の「価値」を決めている。
しかし人の値打ちとは本来、その人が何も持っていなくても、人のために何ができるかということだ。それこそがその人の価値であるべきだ。お金もない、権力もない、そういう状態でも他人のためにどれだけ誠実に、見返りを求めず尽くすことができるかがその人の本当の価値ではないか。それこそがその人の魅力であるべきだ。
この違いを理解するには、人を見る目を養わなくてはいけない。人を見るときに一番重要なのは、肩書きや財産ではなく、その人が人間としてどれだけ魅力的かということなのに、最近の世の中ではそのことが軽視されている。その違いを知る機会のない人は、正直、可哀想だなと思っている。人の価値とは深いものなのだ。
#1はこちら
#1 ポール・マッカートニーとスティーヴィー・ワンダーの競演で黒人と白人の溝を知ったKダブシャインが解説する「アメリカと日本のラップシーンの違い」
文/Kダブシャイン
『Kダブシャインの学問のすゝめ』(星海社)
Kダブシャイン
2023年6月21日
192ページ
¥1,485
ISBN:978-4-532626-8
洗練された文学的な「韻(ライム)」表現と社会的な「詞(リリック)」の世界を表現し続ける、日本屈指の“社会派ラッパー”が、日本の教育制度に、そして現代社会に、物申す
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自分が自分であることを誇る
そういうヤツが最後に残る
――Kダブシャイン「ラストエンペラー」より
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稀代のラッパーが提言する、個人の自立と日本の教育大国化
真実が軽視される議論の横行や広がり続ける格差と貧困など、目を背けることができない複雑な問題を抱えた日本の現状を憂うのは、30年にもわたり社会問題をラップで訴え続けてきた稀代のラッパー、Kダブシャインだ。この状況を打破する最善策は、新たな教育制度を根付かせることだと彼は主張する。十代で渡米した彼は、差別で苦しむ黒人達がラップでその苦境を打開し、世界を変える様を目撃した。その原動力は「教育」にありーーそう確信したKダブシャインは、本書に自らの経験に基づく「学問のすゝめ」を書き記した。日本が世界最高レベルの教育を提供できる国となり、新しい教育で社会が変わることを切に願う。