低温・濃霧・不景気・人口減の街の釧路が、なぜ別荘地

私は正直言って驚いた。低温・濃霧・不景気・人口減の街の釧路が、なぜ次の別荘地候補に……?

後でニトリパブリックにそう言わしめた一つの理由に思い当たった。

「狙った恋の落とし方。」--。

2008年に公開されたその中国映画の原題は「非誠勿擾」。

歴代興行第1位を記録するヒット作で、中国国内で1億人以上が観たものだ。中国での北海道観光ブームをつくったきっかけになった映画で、舞台は北海道の道東。釧路、阿寒、網走、厚岸(あつけし)、斜里(しゃり)、美幌(びほろ)の現地ロケも行われた。この映画の配給元(日本国内)がニトリパブリックだった。ニトリの国際的な躍進、事業拡大はこの頃からはじまっている。

以来、15年。

この間の北海道内の変わりようを振り返り、道内全域を俯瞰してみると感慨深い。長いレールに沿った壮大なプランが確実に進んでいるように感じるのは私だけだろうか。

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倒産自治体のその後(北海道夕張市)

2022年4月。エゾシカがゆったりと街中を横切っていた。人影が見えない。

自治体倒産(06年)で全国的に有名になった夕張市だが、若者や子どものすがたが本当に街中に見当たらない。スーパーでも、コンビニでも。私が滞在した3日間ともそうだった。

夕張の「終わりの始まり」を決定づけたのは、17年だったかもしれない。

この年、鈴木直道市長(当時)は市有財産の「夕張リゾート(スキー場ほか三施設)」を企画コンペで民間へ売却した。固定資産税の免除(3年間)も付けて、虎の子の財産を手放した。それが夕張迷走に拍車をかけた。

落札したのは在日中国人が代表を務める「元大リアルエステート」。その額は2.4億円だったが、計画として発表されていた100億円の投資はその後なされず、2年後の19年、これらの物件は、香港ファンドのグレートトレンドへ15億円で転売された。

元大リアルエステートの呉之平代表は「夕張リゾート」を落札した同年、「夕張鹿鳴館(ろくめいかん)も手掛けたい」と夕張市に申し出た。

夕張鹿鳴館は、1913年に建設された木造建築物で国の登録有形文化財。炭鉱全盛期の栄華を偲しのばせ、天皇・皇族の宿泊施設にも供された迎賓館である。夕張市はその要望通り、この建物の敷地と庭園、さらに周辺山林(ゴルフ場跡地)も含めた合計9.6ヘクタール(いずれも市有地)を同代表に無償で貸付けし、それを今なお続けている。お人ひと好しの典型ではないか。