オープン後、夫婦ゲンカが増えた

――ぼんごではどのような修行を?

樋山千恵さん(以下、千恵さん) 私は完全に弟子入りして、半年間ほど店で仕込み作業や握りを学びました。
夫は月に一度のおにぎり教室に通ったり、女将さんと個人的に会って勉強させてもらったりして出店の準備に走りまわってくれました。
ぼんごさんの握り台は、何年も修行しないと立てません。それで、ある程度勉強したらもう実践に入らなければと思い、修行後に半年ほどの間借り営業を経て、山太郎のオープンにたどり着きました。

開店初日で2時間待ち! 大人気おにぎり専門店を営む夫婦の経営哲学。「お客さんがもらす“日本人でよかった”がおにぎりの醍醐味」。目標は「最後の晩餐で食べたいごはん」_3

――修行で学んだことで、一番大切にしていることは何ですか?

千恵さん おにぎりだけど握らず、握りたてで大きくて具だくさん、というのがぼんごさんの一番大切にしていることです。
ぼんごさんから、ベタベタとおにぎりに触らず一手でも少なく握り、ふんわりおいしくきれいなおにぎりを出すことを教わりました。これは今も常に意識していますね。(ぼんごの)女将さんには、「握りたて」「大きい」「具だくさん」の3つができなければぼんご出身と名乗ってはダメだよと言われています。
おにぎりの提供だけでなく金銭の授受も、きちんと両手で、お客様の目をしっかりと見ながら渡しなさいと言われました。

潤さん お客様への向き合い方は勉強になりました。ぼんごさんってお店としての変なこだわりがなくて、お客さんの求めるものに全部応えていこうとした結果、現在のような形になったんですよね。
お客さんへのホスピタリティといいますか、精神的な部分が本当に勉強になりました。

開店初日で2時間待ち! 大人気おにぎり専門店を営む夫婦の経営哲学。「お客さんがもらす“日本人でよかった”がおにぎりの醍醐味」。目標は「最後の晩餐で食べたいごはん」_4

――お店をオープンさせてから、どのようなところで苦労されましたか?

千恵さん オープンにあたってそれなりに仕込みを用意したつもりでしたが、オープン2日目で全然足りなくなってしまって。

潤さん 普通は初日から行列なんてできないのに、ぼんごさんで修行をした話が広まっていたから開店時点で2時間待ち。デビューしたてのルーキーがいきなり大一番みたいなもので、プレッシャーと不安で大変でしたね。
あとはふたりで働いているので、夫婦ゲンカが増えて家庭内でも苦労しています。

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千恵さん 険悪というわけではないですが、お互いの境界を超えてくるとやっぱりイラつきますね。旦那は人事のプロだから私が口を出したら腹が立つと思いますし、私は現場でオペレーションもしているのに、旦那に何か指示されると、「立ってないのに何がわかるんだ!」となってしまいます。

潤さん だんだんと口も悪くなりますから。どこの会社でもあると思いますけど、現場の人間と指示する側の食い違いですね。