34年間で一度だけ「ボケとツッコミを変えたほうがいい」と言ったコンビ
——アドバイスを受け入れるのも才能のひとつですね。
本多(以下略) 僕はダメ出しでも「こうしなさい」とかは絶対に言わないんです。「こういうやり方もあるよ」と、別の引き出しを教えるだけ。ただ、34年間で一度だけ、「ボケとツッコミを変えたほうがいい」と言ってしまったコンビがいます。それがナインティナイン。僕自身、NSCの講師として最初の授業だったので、つい思ったまんまを言ってしまいました。
ナイナイにはもうひとつ、今では絶対に言わないことを言っています。岡村隆史に「君は必ず売れるよ」って。僕のポリシーで、どんなに確信しても「売れるよ」とは言わないようにしているのですが、これも講師1年目だったせいで、つい言ってしまった。僕にNSCの講師をやらないかって話が来たとき、「ダウンタウンみたいなコンビが来るかもしれへんで」と言われていて、内心さすがにそれは無理やろと思っていたんですけど、岡村隆史を見た瞬間「ほんまに来た」って思ったんですよ。
——「売れるよ」と言わないようにしているのは、なぜですか?
せっかく学費を払って来ているほかの生徒たちに失礼だから、っていうのもありますし、言われた本人たちの成長や進歩が止まってしまうからですね。鵜呑みにしないまでも、「これでいいんだ」と本人たちが思った瞬間に成長の速度は遅くなります。なので、今はどんなにこいつは売れると確信しても、心の中で噛み締めるだけで、口には出しません。
……あ、もう一人だけ、岡村隆史のほかに「キミは天才だ」と言ってしまった生徒がいました。キングコングの西野です。僕はよう覚えてないんですけど、西野本人が「俺は本多先生に天才って言われた」と言ってるんで、きっと言ったんでしょう。
——西野さんのことを「天才」だと感じていたんですか?
感じてました。まだキングコングを結成する前、グリーングリーンというコンビでコントをやっていたのですが、岡村隆史以来の衝撃でしたね。ネタがおもしろいとかではないんです。とにかく西野のオーラが半端じゃなかった。人前に出る人間としての存在感が尋常じゃなかった。実際キングコングは、NSC在学中に「NHK上方漫才コンテスト」の最優秀賞をとってますからね。異例も異例、いまだにそんな生徒は出てきていません。
岡村と西野以外だと、梶原と友近。この4人は初見で絶対売れると思いました。それとブラックマヨネーズを組む前、関西キングというコンビでやっていた小杉ですね。声がもう一級品でした。よく通る声で、この声があったら間違いなくプロになれると思いました。