中国との親密な関係
佛光山と創価学会のもうひとつの共通点は、中国との政治的距離の近さである。もともと中国大陸生まれの外省人1世である星雲は両岸交流への関心が強く、1990年代後半には、かつて自身が中国にいたころに住職を務めていた江蘇省宜興市の大覚寺が荒れ果てていることを知り、佛光山から資金を出して非常に豪壮な寺に建て替えている。
のみならず、国民党が中国大陸側との協調路線を明確にした2000年代以降は、両岸の平和的統一を訴える政治的な主張も行うようになった。
星雲は世代が近い江沢民(元国家主席)とは2回会っており、同じ江蘇省出身である関係もあって個人的にも信頼関係を築いたらしい。また、2014年には国民党名誉首席の連戦が率いる訪中交流団に加わる形で習近平とも面会した。この際、習近平は星雲に「(星雲)大師が私に送ってくださる書籍は、すべて読んでいます」と声を掛け、星雲も習政権のスローガンである「中国の夢」を大いに讃えてみせた。
佛光山の中国との距離の近さは、創価学会と負けず劣らずなのだ。そもそも、中国は1950年代から当時国交がなかった日本へのアプローチとして仏教外交を利用しており、創価学会と深い関係を築いたのも、この文脈の延長線上のことだった。佛光山についても、やはり中国の仏教外交チャンネルの大きな柱である。中国から見れば、台湾に対する統一戦線工作のうえでは欠かせないファクターだ。
伊香保に根付いた仏教版ディズニーランド
もっとも、佛光山は教義それ自体は「まとも」である。日本においても、1993年に東京都板橋区に最初の日本拠点・東京佛光山寺が建立されて以来、山梨県の佛光山本栖寺、さらに名古屋・大阪・福岡などの各地に寺を建てている。なかでも豪壮なのが、2018年に群馬県渋川市の伊香保温泉のすぐ近くに建てられた佛光山法水寺だ。
関東の名湯として長年知られてきた伊香保温泉は、周辺に牧場や遊園地、複数の美術館や博物館などが点在し、これらをめぐりながら滞在するのがおすすめだ。そして2018年からは、この近隣の観光スポットに法水寺が加わった。渋川伊香保温泉観光協会のウェブページにもばっちり記載されており、現地で信頼を得ているようだ。
日本にある佛光山系の寺院のなかで、法水寺は台湾本国の大本山と同じく「観光」に特化した寺院である(海外の宗教施設が普通の観光施設として市民権を持つ事例は、日本ではあまりないだろう)。