国民の1割が海外で出稼ぎ労働者になるフィリピン

フィリピンは国民の1割が出稼ぎ労働者として海外に出ている、出稼ぎ大国だ。フィリピンの国際空港には、海外出稼ぎ労働者専用口がある。その数の多さが窺い知れる。また、こうした専用口を作る以外にも、海外雇用庁や海外労働者福祉局があり、国として海外出稼ぎ労働者に対して、様々な支援を行っている。いわば国をあげて、海外出稼ぎを推奨しているのだ。

海外からの送金は、国のGDPの実に1割程度に当たる。ショッピングモールには、送金会社が何社も入っているし、街中にも外貨両替所が至る所にある。

こうした海外からの送金で生活が成り立っているフィリピンの家族は多い。頭では国同士の経済格差、フィリピンの海外出稼ぎの仕組みや、海外送金によりフィリピンという国の経済や家族が支えられているということは理解できる。日本に出稼ぎに来たミカと結婚するということは、自分もこうした仕組みの中に組み込まれるということも理解していたつもりだった。

それでも、実際に毎月の定期的な送金や、臨時送金として大きな金額をフィリピンに送るのを間近で見ると、頭ではなく感情の部分で「大変だな」と思ってしまう。

「わかってる! 今だけだから! フィリピンにお金送るのも!」毎月20万以上を祖国に送金するフィリピンパブ嬢と結婚して痛感する「出稼ぎに頼る国家体質」_2

日本に来るために、マネージャーとの間で結んだ契約は、奴隷契約といえど、切れれば自由の身となれる。だが、フィリピンの家族への送金は終わらない。いつまで毎月大金を送り続けなければならないのかわからない。

ミカがフィリピンパブ勤めを終え、妊娠、出産し、姉の家を出た後も、毎月、少額でも生活の足しになればと送金は続いていた。僕だけの稼ぎの中から、家賃、光熱費、食費などを払い、残った僅かな金の中からフィリピンへ送金する。

正直、日本での生活は楽ではない。それでもフィリピンからは、「お金を送ってくれ」という連絡が頻繁に来る。生活費としての定期送金以外にも、病院代はもちろん、ビジネスで急に資金が必要になった、車のローンを払ってくれなど、そういった金の無心にも対応しなければならない。ミカが働いていない今、その金を出すのは僕だ。

「明日お母さんの誕生日だから、1万円送るからね。お金ちょうだいよ」と、仕事から帰ってきてまず聞くのが、フィリピンへの送金話という時は、さすがにガクッと力が抜ける。