“IT成功者”が住む、ベイエリアの文化的中心地

「サンフランシスコ」と聞くと、皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか。

ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに続く、全米の人気都市? 坂の多い街並みを走るケーブルカーや赤い色が印象的なゴールデンゲートブリッジ、世界一脱走が難しい監獄島・アルカトラズなど、数多くの観光名所がある街? 1960年代のヒッピー文化を歌ったスコット・マッケンジーの名曲「花のサンフランシスコ」も有名だ。

日本人にとっては、1990年代にミスタードーナツがサンフランシスコのチャイナタウンをイメージした飲茶メニューを提供したり、2002年頃に新庄剛志がサンフランシスコ・ジャイアンツで活躍したりと、もしかしたら全米第3位の巨大都市・シカゴよりも馴染みが深いかもしれない。

実際に同市を訪れたことがある人なら、このサンフランシスコにシリコンバレーを合わせた「ベイエリア」が、今日の社会を牛耳るテクノロジーのメッカであり、個人資産10億ドル(1400億円)以上の超富裕層が世界一多く住むエリアであることもご存じかもしれない。

ただし、AppleやGoogle、Meta(旧Facebook)などの本社があるシリコンバレーは、わずかに郊外型のショッピング施設があるだけで、美術館などの文化施設や観光地はほとんどない。そのため、こうした巨大企業に勤める裕福な経営陣の中には、街の賑わいを求めてサンフランシスコに住む人も少なくない。

TwitterやPinterestのように、サンフランシスコに本拠地を置くIT企業も多い。動画サービスのYouTubeも、サンフランシスコ郊外のサン・ブルーノに本社がある。

《ドラッグ蔓延も深刻化》被害額950ドルまでの窃盗は「軽犯罪」扱い…“万引き天国”サンフランシスコに広がるディストピアの闇_1
米国カリフォルニア州北部に位置するサンフランシスコ(出典:shutterstock.com / Lynn Yeh)
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そんな土地柄だけあって、この20年ほどの間に、もともと高かった不動産価格がさらに高騰している。50平米ほどの1室アパートでも、家賃は月額50万円を下らない。小さな家でも買おうとすれば、普通に数億円の買い物になる。東京・港区の2〜3倍以上の不動産価格だ。

「ITで成功した世界でもトップクラスの富裕層が住む街」と聞くと、先進的な未来都市を想像する人もいるかもしれない。たしかに最近では、街中で「Cruise」という無人の自動運転タクシーが走り回っているなど、未来的な部分もあるにはある。

一方で、コロナ禍以降、街の中心部ではまるで末世のような荒廃とした様子を目にすることも多い。