自転車通学者の半数は、電動アシスト車が欲しい!

──SmaChariを開発するそもそものきっかけは?

きっかけはホンダの新事業創出プログラム「IGNITION」に参加したことでしたが、自転車へモーターを後付けするアイデアは学生時代からありました。

当時、片道約10kmの自転車通学をしていて、とにかくそれが辛くて、オートバイに乗ろうにも「三ない運動」(高校生に対しバイクの「免許を取らせない」「買わせない」「運転させない」の教育方針)が壁となり難しく、自転車に「全国高等専門学校ロボットコンテスト」で使うモーターを付けられないかと夢想していました。

──プロジェクトを進めるにあたり、市場調査をしたそうですが…

自転車通学を行う高校生は約180万人もおり、全国各地で高校生に直接ヒアリングを行いました。調査した自転車通学する高校生2,708人のうち、48%が自転車通学に体力への負担を感じており「電動アシスト自転車が欲しい」と答えました。なんと高校約5,000校のうち、通学路に高低差50m以上の坂がある高校は約45%もあります。

印象的だったのは、神奈川県の相模原です。通学路に長い坂道が多く、女子生徒の10%がすでに電動アシスト自転車を使っていました。男子生徒はスポーツタイプの自転車に乗りシャカリキにこいでいましたが、本音は「電動アシスト自転車にしたいが、ママチャリタイプでは格好がつかない」という話でした。

私も学生の頃、同じ思いを持っていました。乗るならばカッコいいものに乗りたい。しかし、電動アシスト自転車は種類やデザインに限りがあります。ならば、ユーザーが好みの自転車を、後付けで電動アシスト化する方が、需要があるのではないかと考えるようになったわけです。「誰もが、好きな自転車を電動化できるようにしたい」という想いのもと、開発の方向を定めました。

SmaChariプロジェクトのメンバー。左より服部さん、野村さん、砂本さん、大貫さん
SmaChariプロジェクトのメンバー。左より服部さん、野村さん、砂本さん、大貫さん

──今後の抱負をお願いします。

実は、ホンダの創業者・本田宗一郎が1947年に初めてHondaの名で製品化した商品は、奥さんが買い物に行くために使っていた自転車にエンジンを載せた「補助エンジン付き自転車」なんです。遠くまで買い出しにいく妻の姿をみて、楽にしてあげたいとの想いから生まれ、後に“バタバタ”という愛称で親しまれました。

補助エンジン付き自転車 通称“バタバタ”
補助エンジン付き自転車 通称“バタバタ”
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SmaChariの「既存の自転車に動力を取り付ける」という発想は、ホンダの原点である“バタバタ”と同じです。新事業創出プログラム「IGNITION」に応募したあと、周りから『これって、現代版の“バタバタ”だよね』と言われました。いつの時代になっても「周りの人を助けたい、移動を楽にしてあげたい」という想いに変わりはありません。

学生さんだけでなく社会人、ご年配の方も、お客さまの手が届く範囲で暮らしを豊かにするために、SmaChariプロジェクトに磨きをかけていきたいと思っています。

取材・文/集英社オンライン編集部