現場を和ませてくれたハリソンのジョーク
──そのインディを長年演じている、このシリーズの大先輩ハリソン・フォードとの共演はいかがでしたか?
私のロサンゼルスの家とハリソンの家は近くて、あるとき道端でばったり会ったんだ。彼は私にこう言ったよ。「ヘイ! ナチ」って。それも大きな声で! 私は「ハリソン、それは映画の中だけだろ? こんなところで大声で言わないでくれよ」って(笑)。
そういうユーモアをもっている人で、現場でも大きなシーンに取りかかる前は「ヘマするなよ」と言われていた。私はハリソンのそういうジョークのセンスが好きだよ。若い人が多い現場で、彼はジョークを言ってみんなを和ませてくれたんだ。
──このシリーズの特徴のひとつに“世界を股にかける大冒険”があります。撮影でもいろんな土地に行ったと思いますが、印象的だったのは?
撮影の大半はロンドンやグラスゴーだったが、モロッコやシチリア島にも行かせてもらった。シチリアは美しい島なんだが、憶えているのはその島についてじゃなくてハリソンのことだ。夜間撮影が行われ、朝の5時に終了したんだが、何とハリソンはそれから自転車で50km走ったというんだ。
私は「正気じゃない!」と思ったよ。一方で、ハリソンはその場にいた私たち全員に、自分自身のことを「情けない」と思わせてしまった。いや、本当は彼のように、もっと鍛えなきゃいけないんだけどね(笑)。
──あなたは、ヴィランをとても魅力的に演じる役者です。そういうあなたがいいと思うヴィランがいれば教えてください。
クラシックなヴィラン・キャラクターでいうとドラキュラ伯爵だろうか。彼はとても興味深い。あとはハンニバル・レクターだ。幸運にも自分で命を吹き込むことが出来たのは本当に嬉しかった(ドラマ『ハンニバル』シリーズ)。アンソニー・ホプキンスが『羊たちの沈黙』(1991)で演じたハンニバルも忘れ難い。
キャラクターではなく役者でいうと、私はピーター・ローレが演じるヴィランがとても好きなんだ。彼のヴィランは哀れで、見ていて胸が痛くなるほどだった。フリッツ・ラング監督の『M』(1931)のローレは素晴らしいよ。
──著名な映画人と仕事をしていますが、是非とも一緒にやってみたいという映画人がいれば教えてください。
才能豊かな新人も次々と出てきていて、そういう人たちをまだちゃんと把握できていなんだけど、是非となるとマーティン・スコセッシ監督になるかな。私は彼の作品が大好きで、若い頃からずっと追いかけていた。彼とは何度も会ったことがあるとはいえ、まだ仕事はしていないんだ。もし彼からオファーをもらえば一も二もなく駆けつけるよ。
俳優だと、スコセッシの映画に出ていた(ロバート・)デ・ニーロやハーベイ・カイテルになる。あとはメリル・ストリープも素晴らしい役者だから是非とも共演してみたいね。