体育館に集まって行われたVR修学旅行
日本修学旅行協会がまとめている「教育旅行年報データブック」によると、コロナ禍にあった2020年度に修学旅行先を変更、または中止した中学校・高等学校は、全体の9割に上ったと報告されている。だが、新型コロナウィルス感染症が5類認定以降は、海外への修学旅行以外はコロナ禍以前の状況に戻ってきたそうだ。
コロナ禍での修学旅行の実情、現在の状況を株式会社JTBの教育旅行担当者に話を聞いた。
「生徒たちにとってかけがえのない修学旅行を中止にはしたくない、実現させたい、という思いで試行錯誤した結果、学校から近隣地域への修学旅行を実施するケースが非常に多かったのが、コロナ禍における特徴です」(JTB教育旅行担当者 以下同)
東京・千葉・茨城・埼玉等の学校は、福島県などの比較的近い東北地方へ貸切バスを利用して実施したり、県内で実施したりするケースが多かったという。
またJTBでは、VR機器を装着し、ヴァーチャル空間での旅行を体験してもらう“VR修学旅行”を開発し、多くの学校に提供したそうだ。先の担当者はその利点を次のように語る。
「VR修学旅行であれば、実際の現地体験はできないものの、生徒全員が体育館に集まることができました。(登校すらできていなかったため)普段の授業などで会えていなかった友人たちと会えて、一緒にVR修学旅行を楽しむことができるということで、市区町村単位で導入されるケースもありました」
しかし、前述したような取り組みによって、生徒たちが希望する“本来の修学旅行”が実現できたのか、という視点で考えれば、決してそうではないと言う。
「生徒達たちは先輩たちの修学旅行の様子を聞き知っていたり、入学時に聞かされていた京都への修学旅行を楽しみにしていたと思いますが、それは実現できませんでした。なんとか実現できたとしても、懇親の場であるはずの食事時間においても、基本的には黙食・アクリル板設置・非対面、という感染拡大防止対策を取らざるを得なかったので、非常に窮屈な思い出の修学旅行となってしまった、というのが実状でした」