ネコは30歳、ヒトは125歳まで生きる日が来る?奇跡のタンパク質「AIM」の最前線 後編 病が無くなる日を目指して_1

ネコは30歳、人間は125歳まで寿命が伸びる?

――AIMは脳梗塞や肝臓がん、脂肪肝、肥満、アルツハイマー型認知症など、多くの病気を治す可能性があるとのこと。人間にとっても大きな希望になりますね?

アルツハイマーは脳にゴミが溜まることで起こりますし、脂肪肝や肥満は脂肪細胞の中にゴミが溜まることによって起こる。溜まると病気になってしまうゴミを取り除くのがAIMの基本的な機能ですから、いろんな病気に効くんです。
そしてAIMはそもそも我々の体の中にあるものですし、自然治癒能力に過ぎません。AIMを研究していると、人間の体は非常に単純で原始的なシステムで出来上がっていることがよくわかりますし、本当に面白いです。

――ヒト薬の開発はどの程度進んでいますか?

ネコ薬より一歩遅れているに過ぎません。ヒト薬に関しては日本医療研究開発機構(AMED)から相当大きな研究費をいただいますし、ネコ薬が先行していることでその情報を下敷きにできるため、非常にスムーズに進んでいます。治験薬を作ること自体は、ネコとあまり変わらないスピードでできると思います。

ただ、AIMは同じメカニズムでいろいろな病気に効くので、ヒトの場合はどの病気で治験をすると試験期間が短く結果が出るか、製薬会社と慎重に選んでいるところです。ヒトの臨床試験はネコのように1年というわけにはいきませんが、ネコ薬の効果が証明できれば非常に大きな後押しになると思います。

――ちなみにIAMで研究を進めている診断薬とは?

採血をすれば人間の体の中にAIMがどのくらいあって、どういう状態かということがすぐわかります。その状態を調べることによって、今ある病気、そして今後起こる可能性のある病気が判断できるよう、データを積み上げているところです。

飛行機のコックピットには、機体のどこかに異常がある時に鳴るマスターアラームというものがありますが、AIMの診断薬を例えるならばこの役割。体にゴミが溜まっているかどうかがわかる最初の診断方法に使えないかと考えています。将来的には、健康診断の時に調べられる採血の項目に、AIMの状態を測る項目が加えられるようにしたい。これはIAMで徹底的にやる大きなプロジェクトの一つです。