身長や体重は遺伝が9割、知能も学業成績も5-6割は遺伝
夫婦の中には、やれ収入面や家事育児の分担などで互いの義務不履行を責めいがみあっている夫婦もいるかもしれない。配偶者を減点方式で評価しがちな人もいるかもしれないが、減点方式は必ず誰でも最後は0点になるのでバッドエンドにしかならない。
ご自分が80歳になった時、家に未婚のままの子がいるような状況を回避したいのなら、夫婦間のいがみあいもほどほどにした方がいいだろう。
とにかく、子どもは親のことをよく見ている。子どもにとって親は環境そのものであり、世界そのものでもある。しかし、だからといって、親が与えた環境だけで子の一生がすべて決定づけられるものではない。環境とは、ある程度の年齢以降になれば、自分で形成していけるものだからである。
環境でなんとかなるというと、それを完全に否定するのが行動遺伝学である。慶應義塾大学教授の安藤寿康氏の著書『日本人の9割が知らない遺伝の真実』で有名だが、具体的には、身長や体重は遺伝が9割、知能も学業成績も5-6割は遺伝によるものとある。外向性や開放性、勤勉性などビッグファイブと呼ばれる性格の5つの因子も概ね5割弱程度である。
遺伝による才能も環境ひとつで潰せる
体格はともかく、他の部分の遺伝の影響が5-6割なら、環境の影響も半分弱くらいあるのではないかと思う人もいるだろう。ならば、教え方や努力である程度変えられるのではないかと考えたくもなるが、安藤氏はそれも否定する。当然学べば学んだだけ、それなりに成績は上がるが、誰もが東大には入れない。誰もが努力や訓練によってオリンピック選手になれるわけではないという。
それはそうだろう。しかし、逆に東大卒の親の子は全員東大に行っているのか?オリンピック選手の子は全員オリンピックに出ているのか?それは遺伝というより、東大を受験する環境、スポーツ英才指導を受ける環境の問題だろうと思うわけである。
大体、能力の遺伝というが、親が大企業の社長で下から慶應からあがって卒業したその子が、親のあとを継いで二代目社長になったとてうまく経営ができるかといえば、あまりそんな例は見たことがない。息子がいい大学に入り、社長になれたのは、それこそ、遺伝や本人の努力云々以前に親の環境の恩恵の力が大きい。
そもそも遺伝ですべてが決まるなら、なぜ長嶋茂雄や野村克也の息子は野球において親のレベルに遠く及ばなかったのだろう、といいたくもなる。逆にいえば、なぜ長嶋茂雄や野村克也があそこまでのスター選手になり得たのかという逆の視点から見てもいい。
それは彼らの親の遺伝子のおかげなんだろうか。彼らの能力が遺伝であったとしても、それを開花させる環境がなければ無意味である。万が一、遺伝による才能も環境ひとつで潰すことができてしまう。つまりは、どれだけ遺伝の影響があったとしても、環境という変数ひとつで変わってしまうのだ。