「ウェブトゥーン」と「漫画」は違うもの

——現在は漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」で『正反対な君と僕』を連載されていますが、こちらは見開き単位でコマを割る、従来の形式で描かれています。縦スクロールとの違いや、難しさを感じることはありますか?

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『正反対な君と僕』より。元気な女の子・鈴木さんと、冷静で「『自分が』ブレない」谷くん。正反対な2人の恋を描くほか、様々なタイプの高校生たちが関わり合う姿を描く

縦スクの漫画では、スクロールしない限り“その次”が見えることがないんですよ。でも見開きで読む今の形式だと、びっくりさせたい場面を左ページに大ゴマで置いてしまうと、右を読んでいる時点ですでにそれが見えちゃいますよね。

なので、ネームを切るときに、「どこかを抜いて右ページに入れなきゃ、でもそうするとテンポが崩れるし…」と苦労しています。

——逆に、よかったこと、おもしろいと思ったことはありますか?

私が読み始めた頃の漫画は、もちろん白黒でコマ割りされたものなので、「自分があれを描いている!」という嬉しさがあります(笑)。昔ながらの、あまりタチキリ(断ち切り)を使わずに基準枠の中にコマが納まるような漫画が好きなので、『正反対な君と僕』でも最初はそういうものを真似して描いていたんですよ。

ただ私の漫画はスマホで読んでくださる方が多いので、それだとちょっとぎゅうぎゅうな印象になるみたいで…紙でしか読まれていなかったものを参考にしすぎてはダメなのかもしれない、と思いました。

——なるほど、同じくコマ割りをするマンガでも、それぞれのメディアに合った描き方があるのですね。

そうですね。そもそも私の描くものも含めてウェブトゥーンというのは、「漫画を描く」というより「アプリのコンテンツを作る」感覚で描くもののような気がしていて。吹き出しと絵で構成されているので同じ「漫画」というカテゴリーに入っていると思うのですが、根本的には違うものなのかな、と思います。

——私たち読者からしても、これまでと違う新しいものが出て来た、というイメージがあったのですが、お描きになっていてもそういう感覚なのですね。

両方をやっている身としては、「今後はウェブトゥーンのような縦スクロールの漫画が世界の主流になるかもしれない」という説が出るたびに、「ウェブトゥーンがどれだけ人気になったとしても両方が存在するだけなんじゃないかなあ」と思っていたんです。

私もそうですが、漫画を読む人はやっぱり“本”という存在が好きだと思うんですよね。『氷の城壁』を描いているときも、「紙の本にしてほしい」という声をいただくことがありました。

本にすることを目的として描くのなら、オールカラーではなくて白黒で書いたほうが印刷もしやすいし、もちろんそのままウェブにも載せられるし。一方でウェブトゥーンも、一瞬の盛り上がりだけでは終わらなかったですよね。今、電子書籍を配信しているところがどんどん縦スクに対応し始めていて、ウェブトゥーンも活性化してきているなぁと思います。

もちろん、白黒のコマ割りされた漫画が配信されなくなることも絶対にないので、どれも残っていくのだと思います。