埋め立てたプラスチックは「循環」しない
ならば、さっさと焼却して熱回収すればよいと思うのですが、欧米各国はそれにあまり積極的ではありません。以前から欧米では廃プラスチックの焼却率が低く、大半をリサイクルと埋め立てで処理していました。
OECD調べの2013年の数字を見ると、たとえばドイツは65パーセントがリサイクルで、熱回収を含めた焼却は35パーセント。フランスも焼却率はドイツと同程度で、埋め立ては28パーセント。米国は、リサイクル35パーセント、焼却12パーセント、埋め立て54パーセント。スペイン、ポーランド、カナダ、ギリシャなど、米国と同じく半分以上を埋め立て処理している国も少なくありません。
焼却に消極的な理由は、言うまでもなく、温室効果ガスの問題でしょう。たしかに、廃プラスチックを焼却処理すれば、二酸化炭素が排出されます。焼却すれば海洋プラスチックはなくせるけれど、それによって地球温暖化を促したのでは、環境を持続可能にする上で何もプラスにならない─そう考えて、埋め立て処理をしているのかもしれません。
でも、それが本当に「サステナブル」なやり方なのでしょうか。地球環境が持続するとは、簡単に言えば地球上の物質が時間をかけて「循環」するということです。たとえば水がそうでしょう。海から蒸発して雲になり、そこから雨になって地上に降り注いで、また海に戻っていく。そうやって形を変えながら循環しているかぎり、私たちが生きるのに必要な水分はサステナブルです。
しかし、地中に埋め立てられたプラスチックは、腐敗して土に還ることはありません。そのまま形を変えずに残ります。そこで行き止まりになってしまい、「循環」しない。それのどこが「サステナブル」なのかよくわかりません。
一方、焼却によって発生する二酸化炭素は植物に吸収されるなどして循環します。前にもお話ししたとおり、二酸化炭素そのものは毒ではなく、植物にとってはご馳走になる。その意味で、廃プラスチックの焼却は「サステナブル」な処分方法だと言えるでしょう。
それによって排出される二酸化炭素の量は、人類社会の産業全体の排出量から見れば微々たるものにすぎません。それで海に流出するプラスチックを減らせるなら、環境にとってプラスのほうが大きいのではないかと思います。
文/酒井敏 写真/shutterstock