「メディアが伝えない真実」という出鱈目に傾倒

戦後民主主義は未完であるが、それでも戦後日本人の中のある部分に、その崇高な理念を検証・分析し、その結果ますます民主的自意識を確立させることの重要性を認識した人々は少なくない。

そこまで強力な民主的自意識を成立させるには経験や知識の蓄積が必要で、一般的にそのためには長い時間がかかる。結果としてその時間経過が彼らの年齢をシニアにしただけであり「高齢者が古臭い左翼思想にしがみ付いている」のではない。長い経験が彼らを戦後民主主義の真の護持者に育てたのであり、革新の高齢化は原因ではなく結果にすぎないのである。

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しかし革新側の年齢構成が高齢のまま推移するのは、その下の世代に戦後民主主義の重要性を継承できていないからである。すでに述べた通りその理由は戦後民主主義が未完で終わっていることにある。戦後民主主義の足腰がさらに弱まってしまい、真の民主主義的意識がはぐくまれないからこそ、その下の世代にも意識の循環が生まれない。革新のシニア化は、ある時期まで辛うじて生きていた戦争の失敗と反省という原体験を継承した人々が、その支持の主役となりそのまま加齢した結果である。

ブロードバンド技術を自明のごとく受け入れ、ネットを利用する「後発」のユーザーたち。微温的にしか戦後民主主義を受容してこなかったシニアは、それが故にもたらされるネット動画の虜になって金属疲労が頂点に達するようにあるとき「ポキッ」とそれが折れて「メディアが伝えない真実」という出鱈目に傾倒していく。